内容説明
龍が生み出す冬に封じ込められた、黄金と氷の街にやってきた龍追い人。古い血を誇る大領主のもとに派遣された、若き吟唱詩人がくだした決断。きれいなものに目がない醜いトロールが出合った、世にも美しいバラ。ドラゴンにさらわれた、女王お気に入りのハープ奏者を捜す、五人の女戦士の冒険…。ファンタジーの名手マキリップの、綺羅星のごとき15の物語を収めた贅沢な短編集。
著者等紹介
大友香奈子[オオトモカナコ]
1965年北海道生まれ。早稲田大学第二文学部卒。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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北風
13
マキリップのハイファンタジーは、織りなす、という言葉がしっくりとくる。まるで金の砂で描いた絵巻物語りのようにきらめいている。言葉は色鮮やかな刺繍を指でなぞるかのよう。現実の世界の童話の続編などもあるけれど、オリジナルだけならば異世界で伝わるお伽噺集で通りそうな感じ。特にサイベルの呼び声が好きなんだけど、実際には難しい感触の話も多いんで、そういうのは高尚すぎてついて行けないときもある。2018/09/05
斑入り山吹
10
マキリップ氏の短編集を読むのは初めて。っていうか出ているのもこれだけかも?今まで読んできた長編のイメージがあるから、短編だと予想を裏切られるところもある。読み手に想像力を求めるので、世界観を頭に入れたかというあたりでもう話が終わってしまうと、15編も入っているこの一冊読むのにそのインプット作業がたっぷりと必要とされるわけで、さかさかとは読めないなぁ。男と女が出てきたからっていって即ラブにならないのが、いいんだよ。マキ氏はグインといい勝負のフェミニストです。わたしは『トロールとふたつのバラ』が気に入ったな。2011/12/22
アカツキ
8
15作品のファンタジー短編集。長編中編小説の一部を切り抜いたような物語やマキリップ版おとぎ話やロミオとジュリエットという感じの作品が並ぶ。あまり好みの作品がなく、私にとってマキリップは長編の人だなという感想。その中でもよかったなと思えたのは、平野の暮らしを嫌って鉱山に戻ってきた娘と龍退治に命を賭ける若者「ホアズブレスの龍追い人」娘に共感、二人の関係が好き。マキリップ版美女と野獣「ライオンとひばり」もともと美女と野獣系の話が好きというのもあるけれど、人の話を聞かない王女様が良いキャラしていて好き。2024/10/10
星落秋風五丈原
7
「ホアズブレスの龍追い人」Harrowing the Dragon of Hoarsbreath 龍が生み出す冬に封じ込められた黄金と氷の街にやってきた、ひとりの龍追い人。彼に絡むのは、地元でずっと暮らしてきた金を掘る女性。状況を変えることを望む龍追い人と、変えないことを望む女性の対立軸ができて、じゃあ絶対的な正義って何?という話になりますが、短編なのでそこで話はもつれず、結構あっさり龍退治へ。龍を追い出すアイテムが意外なものだった!というオチが笑えました。2011/03/26
温
6
内容の濃い短編集で、おなかいっぱいです。場面を想像しづらいものもありましたが、マキリップらしい美しく幻想的な世界を堪能しました。2011/06/10