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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
84
ケストナーがナチスの迫害を逃れて亡命先のスイスで書いたもので、軽文学の重要性を説き、自ら実践してみせた作品。カフェで誰だかわからない相手に一目惚れし、惚れてしまえば後先なし。若い二人の明るさからは、戦争の暗さは感じられない。ケストナーが亡命先で娯楽小説を書いたのは、戦争の暗さを文学の中に持ち込みたくなかったからなのかもしれない。2021/10/24
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
37
夏の休暇をドイツとオーストリアを毎日行ったり来たりして過ごした、大金持ちの青年の恋の物語。ユーモラスな語り口で嫌な人は誰も出てこないし、ゲーテやモーツァルトなどの作品やエピソードも盛りだくさん。登場人物は皆お金持ちで、あまり役に立たないことをせっせとやっているのを大真面目に語っているのも楽しい。特に心を打つ作品ではないけど、つまらない事に一生懸命な様は、何か吹っ切れた気分になるかもしれない。2019/07/29
新田新一
24
児童文学の大家ケストナーの大人向きの小説。為替管理のためにドイツ側ではお金持ちで、オーストリアで貧乏という主人公の設定が面白いです。ゲオルクはオーストリアでお金が無くなったときに、美女と知り合い彼女に惹かれていきます。やがて、その美女は意外な人物だと分かるのですが……。気持ちよく読める良い小説です。この明るい雰囲気は『飛ぶ教室』などと似ていると思いました。悪人がほとんど出てこないためでもあります。この描き方は、人間の善性を信じるケストナーの姿勢から来るものかもしれません。2024/05/26
くみ
22
ケストナーの大人向け恋愛小説。 前書きに1937年とあるがドイツはナチス政権下。ケストナーの作品も焚書対象になったというが、この作品もそうだったのだろう。そう思うと、今、この作品を手に取れることが感慨深い。当時は法律でオーストラリアドイツ間で為替持込制限があった。その為主人公ゲオルグはベルリンでは裕福、オーストラリアでは貧乏。しかしお金がないのがきっかけでコンスタンチェに出会う。直接的な表現がない分、ひとつひとつの言葉を読み飛ばせない。特にコンスタンチェがゲオルグをベットに誘うところなんか、おしゃれすぎ。2018/04/22
鐵太郎
22
だれひとり悪い人間はいないお話の、いったいどこが楽しいのか。そう思ったら、この本を読めばいい。一つの答えがわかります。モラリストの看板を下ろしたケストナーの、上品で、軽妙で、優美なユーモア小説です。心が暖かくなります。1938年から7年間、終戦の時まで、ケストナーのこの小説すらもドイツ国内では発禁処分だったそうです。世の中は、不可思議なもの。さらに不可思議なことに、この発禁処分の本を元に、1942年ドイツで映画化されたそうです。ケストナーの名前はなく、匿名作家の作品として。世界は、驚きに満ちています。2005/04/16
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