内容説明
7月7日、日曜日の朝。カナダのある町に突然、幅100メートル、深さ30メートルの溝が出現、時速1600キロで西に向かいだした。触れるものすべてを消滅させながら…。世界じゅうを混乱に陥れる怪現象「刈り跡」、不可解な死の真相を迷宮に追う警部「窓辺のエックハート」、想像力の罪を犯し幽閉された人々をめぐる表題作など、奇想きらめく20の物語を収録。
著者等紹介
マコーマック,エリック[マコーマック,エリック] [McCormack,Eric]
1940年、スコットランド生まれ。グラスゴー大学卒業。1966年、カナダに移住。マニトバ大学、ウォータールー大学で17世紀および現代英文学の教鞭を執った
増田まもる[マスダマモル]
1949年宮城県生まれ。早稲田大学文学部中退。英米文学翻訳家。訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
149
20ページくらいの短編を集めた短編集。ナンセンスギャグとも思えるネタでブラックユーモアを描く。ホラーと言うべきかユーモアと言うべきか。猟奇的でグロい設定も多いが陰惨さや不快感はあまり無い。不思議な世界だなぁ。表題作の他『庭園列車』『エドワードとジョージナ』『刈り跡』『ジョー船長』が好き。2023/09/04
(C17H26O4)
89
奇想天外な話の数々。陰惨だし猟奇的だしグロテスクだし卑猥だし、ともすれば嫌悪感を抱きそうなのに何故かそうはならない。すごく面白かった。声を大にして言うのはなんだかちょっと憚られるけど、これかなり好き。作り話であることは明白なのにも拘わらず、まことしやかなストーリーテリングにひょっとしたら地球のどこかでこんな奇しい出来事が本当に起こっていても不思議じゃないかも、なぁんて想像できてしまう楽しさもある。マコーマックはこれで3冊目だった。出てるのは多分4冊だから読めるのはあと1冊。2022/01/27
sin
73
人生と云う物語のなかにはその時間を生きて体験した以外の物語が含まれている。それは他人の経験であったり、本や映像で知る過去の記録、あるいは創作や未知の存在…そして物語は実人生の中に現れて主旋律となる僕らの一生を飾りたてる。同じようにマコーマックの物語には寄木細工の様に物語が散りばめられている。そして主人公は脇役と化す。勿論、人生の様に答えはない。2020/05/12
かりさ
68
以前から読みたかったマコーマックの奇怪な短編堪能しました。幻想文学と呼ぶには奇想に溢れ、グロテスクで猟奇的な描写もあり、着地の見えない不安に慄きながらもその物語たちのめくるめく想像の世界にため息がもれます。奇想さゆえにその高みに追いつくまで読むのに時間がかかりましたが、とても豊かな読書が出来て満足です(お腹一杯とも言えるかしら)。それにしてもこの圧倒的な想像力。こちらの思う世界を裏返し、奇妙に歪んだ異世界を見せられるごとにおぞましさを感じながら哀愁も共にある。密かにこっそり楽しむのが相応しい短編集です。2015/10/19
藤月はな(灯れ松明の火)
54
カフカや小山田浩子さんの作品に通じる、心にざらざらした感触を残す不条理さとマーコックお得意の性的且つ猟奇的なグロテスクさと決して信用できない語り手からなる話が融合したような短編集。特に『パタゴニアの悲しい物語』は同作者の『パラダイス・モーテル』に通じると分かった時は鳥肌が立ちました。衆人環境での無言の圧力への罪を問う『祭り』と未開と文明、双方のある意味、傲慢な見方が混在する『海を渡ったノックス』、必ず、死に通じる自然の性愛を残酷に展開する『庭園列車』が印象的でした。2013/10/25
-
- 和書
- 家持と恋歌 塙選書