内容説明
帝ご寵愛の猫はどこへ消えた?出産のため宮中を退出する中宮定子に同行した猫は、清少納言が牛車に繋いでおいたにもかかわらず、いつの間にか消え失せていた。帝を虜り左大臣藤原道長は大捜索の指令を出すが―。気鋭が紫式部を探偵役に据え、平安の世に生きる女性たち、そして彼女たちを取り巻く謎とその解決を鮮やかに描き上げた絢爛たる王朝推理絵巻。鮎川哲也賞受賞作。
著者等紹介
森谷明子[モリヤアキコ]
神奈川県生まれ。2003年、王朝ミステリ『千年の黙―異本源氏物語』で第13回鮎川哲也賞を受賞してデビュー。卓越した人物描写とストーリーテリングで高い評価を受ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちょろこ
123
よく仕立てられた一冊。鮎川哲也賞受賞作だけあってさすが。安楽椅子探偵と化した紫式部が日常の小さな事件を解決していく三篇は時の流れと共によく仕立てられたストーリーだった。小さな事件から大きな源氏物語を巡る謎へと綺麗にまとまりゆく過程、ストンと腑に落ちる鮮やかさはお見事。衣ずれの影で渦巻く宮中での打算、源氏物語と常に隣り合わせのような雅な時代の味わいも楽しかった。源氏物語に対する紫式部の胸中、書く覚悟とあの人へのあっかんべーがスカッと。藤原実資には興味津々、立ち位置等もっと知りたい。ロバート実資、要チェック。2024/01/09
えにくす
102
大河ドラマ『光る君へ』を視聴している人は、必読の書だ。名探偵まひろが活躍する、歴史ミステリー。平安京で起こる数々の事件を侍女の阿手木から聞いて、推理し解決するのが紫式部だ。式部が佐々木宣孝と、幸せな結婚生活を送っているのが嬉しい。早くドラマでそのシーンが見たいよ。他にも道長を始め、定子・彰子・実資・隆家等、ドラマの登場人物とイメージが重なる。道長は嫌なヤツだわ。可愛い姪にあそこまで嫌がらせするなんて、大人気ない。逆に実資の、ムッツリスケベぶりが面白い。『光る君へ』放送中の今だからこそ、楽しめる作品だ。★42024/04/23
初美マリン
99
消えた源氏物語の一条をめぐり、背景も含め堪能した。最後にこうきたかと、思わずうなる。とにかく源氏物語が今まで残されたことに感謝。2024/05/20
タイ子
87
こういう形で源氏物語が歴史ミステリになっているのも面白い。紫式部を安楽椅子探偵とするならばその助手は式部に仕える阿手木。この阿手木のキャラがいい。事件の真相を追っかけながら関係者とちゃっかり結婚してるいう。猫の失踪事件あり、源氏物語のある重要なシーンが描かれた帖が一冊紛失。物語のあらすじを一部何となくだが知っている身としては紛失した帖がいかなものだったなどと本作で初めて知った次第。が、この紛失事件の顛末までは面白い。絶賛の裏にある批判、非難の声にめげず書き続け1000年後も読み続けられる偉大な物語に感服。2024/04/06
ねむねむあくび♪
73
図書館で発見。面白そうな匂い(笑)がしたので、借りてみたら当たり!v(´∀`*v) とても良かった~。式部の悩み、賢さ、アテキの溌剌とした所も物語を生き生きとさせ、源氏の物語が、人々を魅了して待たれていたという描写に、共感。「かがやく日の宮」の帖が、藤原定家の記録のとおりなら、一体どんなお話だったのだろうと思うとワクワクする。この謎が解き明かされる事は無いのだろうけど…。森谷さんの他の作品も読みたいし、丸山才一氏の『輝く日の宮』も読みたくなった。2016/05/04