出版社内容情報
ラッコ密猟船員の殺害事件、英国軍艦の水兵失踪事件……異国情緒あふれる明治の函館で颯爽と活躍する水上警察署の事件簿。絶賛を博した著者40年ぶりの傑作、待望の文庫化。
内容説明
明治二十四年、国際貿易港・函館に誕生した小さな警察署。署員たちを指揮するのは、アメリカ放浪経験をもち、フェンシングの名手でもある五条文也警部。ラッコ密猟船の水夫長の変死や、英国軍艦の水兵失踪などの難事件に、男たちは日夜陸と海を駆ける―。長年の沈黙を破った著者が新境地に挑み、絶賛を博した明治警察物語。若き日の森鴎外の函館訪問譚「坂の上の対話」を併録。
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ミスランディア本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カムイ
45
函館出身の作家で明治時代を舞台にした函館を描いています。作家は兼業作家であったので作品は少ないが短編集は珠玉なできが多くありそしてこの本が最も好きな作品である。登場人物もほぼ史実であり明治時代の警察や風俗も興味深いのも良かった。短編集であるが二編の中編と考えても言いかもしれない、前編は水上警察の五条文也警部が主人公で事件を解決する、密輸や殺人事件の謎解きは警察にいながら探偵の役割みたいであった。後編は(森林太郎)森鴎外が函館に軍医として視察に来ていたと言うこと、(へー、そーなんだ)と、知らなかった😅2022/07/24
藤月はな(灯れ松明の火)
21
一読惚れ(笑)作家となった高城高氏の明治の函館の警察の活躍を描いた作品。明治24年の設定なので賭場や領事裁判権が暗黙でまかり通り、薩摩出身の警察官がサーベルを「ちぇすと」と上段から振り下ろすという描写も伺えて楽しいです。おまけに森鴎外氏の感染病の発生についての考察から列強の帝国主義による世界情勢のきな臭さを暗示させた「坂の上の対談」も凄かったです。2013/02/16
α0350α
8
ちょっと期待し過ぎてました。明治時代の話は好きなので当時の出来事や背景なんかは楽しめました。2015/03/20
ブラックティー
6
私の好きな明治時代モノですが、これまで読んできた小説と違うのは函館という街を舞台にしていること。この時代の函館は英米露の貿易船や海軍と密接なつながりを持ち、特殊な発展を遂げているのです。そのため函館水上警察の扱う問題は多種多様。国際的にも何かと不利な状況下で、胸のすくような活躍(と立ち回り)を見せてくれる主人公に拍手を送りたくなります。若き日の森鴎外が主人公の番外編『坂の上の対話』は、より詳細に明治期の函館の習俗を描写しておりこちらも◎2013/05/17
kengzilla
4
函館に住んでいた身としては実にワクワクさせられる1冊だった。作者の視線が常に社会の弱い立場にある人々へ向けられているのがいい。一番グッと来たのは番外編でもある坂の上の対話。それまで市内に漂っていた穏やかな異国の香りが,あの対話で一瞬にしてロシアや英国,大西洋,果てはアフガンへと繋がって,日本がグレートゲームに参戦する直前の緊張感や列強との力の差が浮かび上がる鮮やかさに痺れた。2011/10/05
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- 和書
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