内容説明
スパイとして国後島に潜入し、ソ連の警備隊に拘束された男。日本に帰還した彼を待っていた真実とは―(表題作)。東西冷戦下、謀略の最前線となった国境の海で繰り広げられる諜報戦に翻弄される者たちを、非情かつ詩情豊かに描いた作品群。そして荒涼たる原野からの地の底の炭鉱まで、北の大地に生きる男たち女たちの事件簿。全集第三巻は昭和30年代前半に発表された13編を収録。
著者等紹介
高城高[コウジョウコウ]
1935年北海道函館市生まれ。東北大学文学部在学中の1955年、日本ハードボイルドの嚆矢とされる『宝石』懸賞入選作「X橋付近」でデビュー。大学卒業後は北海道新聞社に勤めながら執筆を続けたが、やがて沈黙。2006年『X橋付近 高城高ハードボイルド傑作選』で復活を遂げた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
38
高城高作品の全集もこれがラスト。「ある長篇への伏線」は男の言動にドン引き。個人的には「冷たい部屋」が一番、印象的でした。自分のことばかりに現を抜かす大人や「自分は哀れな境遇にいる」ということを思い知らせるように無神経な一言で自尊心を傷つける大人に対し、子供は侮蔑の視線を持って逆襲しなければいけない時はある。齢を喰っているといっても取るに足りない大人に「無邪気」に隠した狡猾さと侮蔑を隠し、寝首を掻く機会を伺う演技力を使うことを本能的に知っている子供が叶わないということはない。2014/06/19
マムみかん(*ほぼ一言感想*)
24
読メを始める前に全集の〈2〉を読んでいます。 久しぶりに読んだこちらも、暗く非情な世界が満載。 昭和33~35年に発表されたハードボイルドな短編作品の数々に酔わされ、ちょっと二日酔いのように気分か滅入る…(笑)。 東西冷戦、仮想敵国ソ連の時代の北海道が、諜報戦の最前線だったという事がリアルに感じられますね。 しかし、ソ連も脅威ですが、駐留米軍情報部の遣り口もけしからんですよ~! アイヌ民族問題や、貧困に起因する犯罪などもあり興味深く読めました☆2014/09/03
HANA
5
北海道を舞台としたミステリ集。北海道というと函館などの青空とかのイメージしかなかったため、道東はこれほど暗いのかと驚かされた。硬質な文体と相まって、その暗さが余計に引き立てられている。2010/04/01
Look
3
面白い。大好き。ミステリとしてのネタがどれだけあっさりしていようが、この語り口で北海道(ほとんど道東)の乾いた寒々しい空気を描写してくれれば、それだけで十分。なので、それを感じない作品は物足りないな……。表題作の「暗い海深い霧」も良かったけれど、「雪原を突っ走れ」が一番印象に残ったかな。あの物寂しさは、そうそう出せるもんじゃない。ハードボイルド最高。2013/09/13
まゆき
3
私たちが知らない対露の緊張感。これは小説だけれどこの作品が書かれた時代の空気はひんやりと伝わってくる気がする。昭和三十年頃というのはそれほど昔のことなんだろうか?読後感に得体の知れない焦りが残る。2012/01/08