内容説明
大学在学中、雑誌『宝石』の懸賞に「X橋付近」を投じ一位入選、江戸川乱歩の絶賛を受けデビューする。以来、「賭ける」「淋しい草原に」「ラ・クカラチャ」などの傑作を発表し、日本ハードボイルドの礎を築いた伝説の作家の作品を集成する『高城高全集』。第一巻は、北海道で勃発した天陵丸沈没事件の謎を、不二新報の支局長・江上武也が追う、著者唯一にして幻の長編。初文庫化。
著者等紹介
高城高[コウジョウコウ]
1935年北海道函館市生まれ。東北大学文学部在学中の1955年、日本ハードボイルドの嚆矢とされる『宝石』懸賞入選作「X橋付近」でデビュー。大学卒業後は北海道新聞社に勤めながら執筆を続けたが、やがて沈黙。2006年『X橋付近 高城高ハードボイルド傑作選』で復活を遂げた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
166
初読みの作家さんでした。日本ハードボイルド界の巨匠ともいうべき作者さんの短編集ですが、とにかく‘シブい‘です。シブさがこれ以上ないくらい滲み出ていて、アッという間にその世界に引きずりこまれてしまいます。舞台設定は結構古めですが、読んでいてもそんな古さはまったく気にならない、むしろその古さが作品自体の質を高めている、そんな感じすら与えてくれます。決して、重い話ではありませんでしたが、今後この作者さんの作品を読む際は、しっかり腰をすえて読まなくてはという気にさせてくれる偉大&貫禄のある雰囲気でした。2012/11/14
えみ
53
あれから3年、事件の真相はどこにあったのか。ノドに刺さった小骨のように頭から離れない謎多き天陵丸沈没事件。新聞記者が思いがけない人との微かな繋がりと、事件と僅かに交差する違和感を手掛かりに謎を追う。事件当時を第1部、3年後の現在を第2部とした全2部構成。新聞記者として、人として、忘れることができない事件、忘れてはいけない事件…きっちりと追い込み囲い込んでくる。そんな硬派さが魅力の小説。事件の裏に見えるそれまでの背景と、そこに映した過去の風景が記者としてのプライドを刺激したことは間違いない。墓標の下は闇だ。2024/07/05
ホームズ
29
『国内ミステリーマストリード』で他の短編が紹介されていたので、まずはこちらから。北海道と昭和30年代という時代がハードボイルドにあっている。200ページくらいの短めの長編小説だけど、色々な出来事が絡み合っている感じが良いですね。短編集の『凍った太陽』も買ってあるから読んでいこう。2014/05/19
星落秋風五丈原
27
技巧に依らず、しっかりした小説を書く人なのだな、とは思う。ただ、江上が物語の真相に気づくまでの過程が、急速過ぎるように思った。もう少し「ああではないか」「こうではないか」など、主人公が迷うシーンがあると、読者も一緒にあれこれ考えられたのに。ハードボイルド小説を読みつけないので、説明を省いた描写に慣れていないだけかもしれない。あと、時代色もあるかもしれないが、「霧のなかで毎日暮らしてるもの…わたしの空気だわ(p172)」なんて言う大人びた少女の言動にも違和感を感じた。2008/03/15
藤月はな(灯れ松明の火)
25
図書館で目にして「面白そう」と思って読んだら好みにドンぴしゃでした。沈没したか船は海上での轢き逃げ事件だったことへの真相を掴んだ記者は真相を究明しようとするが関係者が死亡し、有耶無耶になってしまった。2部からはしっかり、ハードボイルド。北海道の潮騒と荒野を走る冷たく、乾いた風を感じさせる作風でした。なぜか「日本版リュー・アーチャー」と思ってしまいました。この作家の作品ももっと読んでみたいです。2013/02/14
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