出版社内容情報
僕らは誰も死なせない。
そのために真実を明らかにする。
友人の不可解な死に潜む、想像を絶する悪意。
日本推理作家協会賞受賞作家による鮮烈なミステリ
NPO法人で自殺対策に取り組む晃佑の元に、元相談者が自殺したという知らせが届いた。遺族曰く、自殺直前の彼はVRにのめり込んでいたらしい。一方、SNSに死をほのめかす投稿を繰り返す浪人生のくるみは、ネット上の自助グループ〈銀色の国〉に誘われる。仮想と現実で、一体何が起きているのか。日本推理作家協会賞受賞作家による傑作ミステリ。
内容説明
自殺対策NPO法人で働く晃佑のもとに、立ち直ったはずの元相談者・博之の悲報が届く。自死する前の彼は、VRに異様なほどのめり込んでいたという。博之は死に誘導されたのではないか―かすかな疑念から、晃佑は元ゲームクリエイターの宙とともに調査を始める。彼らが直面した、仮想世界と現実で進行する恐るべき計画とは。日本推理作家協会賞受賞作家による鮮烈なミステリ。
著者等紹介
逸木裕[イツキユウ]
1980年東京都生まれ。学習院大学卒。2016年、『虹を待つ彼女』で第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。2022年、「スケーターズ・ワルツ」(『五つの季節に探偵は』所収)で第75回日本推理作家協会賞“短編部門”受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えみ
60
逃げ込んだ先が、仮想現実の中だったとしても「自分」という個体自体がなくなるわけではないというジレンマ。犯罪の香りが漂う「銀色の国」。しかし現実世界に居場所を失くした者たちにとってのその場所は、天国に等しい場所だった。…自殺志願者に寄り添う、という人の優しさはVRという機器を使った過剰な依存に負けてしまうのだろうか。洗脳と自死、そして誰かが仕組んだ恐ろしい計画。息をのんで事の成り行きを見守ったが、心乱される。バラバラだった人々が「銀色の国」へ集結したとき、微かな希望と僅かな絶望が交差する感情包括ミステリ。2023/04/22
よっち
34
自殺対策NPO法人の代表として日々奔走する晃佑のもとに届いた友人の自殺という悲報。元相談者の友人が今になって死を選んだ原因を調べるうちに、恐ろしい計画の一端に辿り着くミステリ。逃げたい衝動を抱える詩織が陥った罠、自傷行為を繰り返す浪人生のくるみ、そして自殺者の原因を探るうちに明らかになるVR「銀色の国」の存在。死を願う人々に忍び寄る常軌を逸した悪意と、影響されてありようを変えてしまった人々がいて、細い繋がりから活路を見出して、向き合い続けた晃佑の熱い想いが引き寄せた結末には心揺さぶられるものがありました。2023/02/18
おうつき
24
VRゲームという題材をそこに繋げてくるんだという驚きがあった。生きづらさを感じている人たちが集う仮想空間上のコミュニティの裏に隠された真実と、その裏に潜む恐ろしいもう一つの事件。実際にあった事件を想起させるような描写で苦しくなる部分もあったが、作品の根底はとても暖かく、読んでいる中で私自身も救われたような気持ちになれた。2024/01/05
アカミネ
16
3人の目線から少しずつ近づいて行く流れの中に見える本筋と目的、怪しい人と偽善の人、サイコパスと被害妄想癖、出来る事に全力な人と出来ない事に狼狽える人、前向きに悪意をばら撒く人と怖気付き受け身の人、皆色んな自分と折り合いを付けながら前に向かって行って、思ったよりまとまった終わりでした。もう少し読まれててもいいのに2025/02/05
秋田 優
12
プレイヤーを自殺に誘い込むゲーム、それがVRになって、日本で水面下で流行したらどうなるのか。本書はそういったテーマから出発してそれを阻止すべく奮闘する自殺対策NPO法人の青年と、人生に絶望し自傷を繰り返していたゲームプレイヤーの少女の2つの視点から主に描かれており、緻密に練られた設定と登場人物らの心理に引き込まれた。本書はVRゲームによって自殺へ誘導させるという手法に焦点が当てられているが、銀色の国がプレイヤーの憩いの場や支えになっていたことから、完全なる悪であるとも言い切れないこともまた事実なのだ。2025/03/25
-
- 和書
- 土と雑草