内容説明
七月七日の午後七時、新進作家、坂井正夫が青酸カリによる服毒死を遂げた。遺書はなかったが、世を儚んでの自殺として処理された。坂井に編集雑務を頼んでいた医学書系の出版社に勤める中田秋子は、彼の部屋で偶然行きあわせた遠賀野律子の存在が気になり、独自に調査を始める。一方、ルポライターの津久見伸助は、同人誌仲間だった坂井の死を記事にするよう雑誌社から依頼され、調べを進める内に、坂井がようやくの思いで発表にこぎつけた受賞後第一作が、さる有名作家の短編の盗作である疑惑が持ち上がり、坂井と確執のあった編集者、柳沢邦夫を追及していく。著者が絶対の自信を持って読者に仕掛ける超絶のトリック。記念すべきデビュー長編の改稿決定版。
著者等紹介
中町信[ナカマチシン]
1935年1月6日、群馬県生まれ。早稲田大学文学部卒。出版社勤務のかたわら、67年から雑誌に作品を発表。第17回江戸川乱歩賞の最終候補に残ったのが、初長編の本書であった。以降、叙述トリックを得意とし、現在に至っている
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
592
途中で、ひょっとしてトリックはこれではないか、と思ったのだが、真相はより深いものだった。脱帽。しかしいい線まで行っていたので、自分をほめておきたい。年代的に新本格ブームのずっと前に出ていた作品だから、さらに評価を上げたいところ。いわゆる「読者への挑戦」まである! 他の中町作品への興味もわいてきました。今でも入手できる作品をとにかく読みたいと思います。2018/04/20
サム・ミイラ
493
これはすごい!という帯につられて購入。確かに構成からトリックに目をみはる部分は多々ある。叙述ミステリーの古典と言うべき作品。何より初出版時であった四十数年前にこれほど画期的で斬新な小説が存在した事に驚く。私見だがこのからくりを一日で遂行したのがあの「容疑者Xの献身」ではないかと思う。意味が分からない方は是非御一読を。2014/12/03
青乃108号
413
読み終わりました。苦行のような辛い読書でした。はっきり言って古い。何より面白くない。ただ単に読み手を翻弄してやろうとする著者の底意地の悪さが透けて見える、それだけの作品。読んだところで何の得る物もない、はっきり言って時間の無駄。この様な作品は淘汰されてしかるべきだろう。2024/01/07
射手座の天使あきちゃん
358
出版社の編集部員・中田秋子 フリーのルポライター・津久見伸助 互いに無関係の二人が、新進作家・坂井正夫の自殺の真相を追いかけはじめるが・・・ 「著者が絶対の自信を持って仕掛ける超絶のトリック」と言われてもねぇ(笑) 面白く読ませて頂きましたが、どうにも無理がありますよね この設定は! お時間のあるときに昭和の雰囲気を味わう作品ですね <(^_^;2013/05/31
夢追人009
357
一昔前の推理作家・中町信さんの1971年に刊行された江戸川乱歩賞候補作「そして死が訪れる」を改題した伝説の名作です。本書は発表当時は多くの選考委員達から酷評されたそうですね。でも本格ミステリの第一人者の作家・鮎川哲也さんは著者の確かな実力を認められたのですね。私は本書を読み終えて複雑な思いに駆られましたね。と言うのも本書を評価する人としない人のどちらの気持ちもよくわかるからですね。先にあらすじを書きますと、午後7時に坂井正夫は青酸カリの服毒によって中毒死しドアの鍵は内側から施錠されており自殺と見なされた。2022/03/03