内容説明
竹の子採りの主婦が発見した白骨死体。身元の確認は難航するかに思われたが、丹後半島の岬の上で消息の絶えていた日本画家とあっさり判明した。背後には過去の贋作事件と贋作グループの存在が見え隠れし、第二、第三の殺人が発生。“ブンと総長”に代わって、名脇役・吉永誠一刑事の活躍を描いたシリーズ第六弾。怪しげな美術ブローカーも登場し、彼とともに事件を追う異色作。
著者等紹介
黒川博行[クロカワヒロユキ]
1949年愛媛県生まれ。京都市立芸術大学卒。84年、第1回サントリーミステリー大賞佳作に入選した『二度のお別れ』でデビュー。86年『キャッツアイころがった』で同賞大賞を受賞。96年「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞を受賞する
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感想・レビュー
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セウテス
82
【大阪府警シリーズ】第7弾。今回の主役は吉永と小沢刑事。竹の成長が、埋まっていた白骨遺体を土中から押し上げる。被害者の身元は直ぐに判明するのだが、全く別の場所で自殺したと思われていた男だった。捜査から、日本画家の贋作グループが浮かんで来るのだが、関係者が次々と亡くなっていく。アリバイ崩しや密室と推理するには魅力的な謎も多いが、やはり大阪弁の会話やテンポの良さが定番だろう。贋作の世界のカラクリには唸らされるが、それにしても面白すぎる人物設定だ。タイトルの意味、犯人の動機、繋がった時に大阪らしい終演が見えた。2020/12/18
papako
67
大阪府警シリーズ。今回はブン同じ班の吉永が主人公。相棒は頼りない後輩の小沢。ブンと総長もちらっと出演。タケノコに押し上げられた白骨死体から、怪しい関係者が自殺する。そして京都、大阪の画廊を巻き込んだ贋作事件が悲劇を生んでいく。途中で犯人と動機はわかりますが、時間トリックや密室トリックと盛りだくさんで楽しめました。大阪府警の中では真面目な吉永と何か光るものを持っているの?と思わせる小沢の何にも無さが新鮮です。本当に細かく練られたプロットとテンポの良い文章、このシリーズ面白い。あとちょっと!2016/10/18
翔龍パパ
36
『大阪府警捜査一課シリーズ』第7弾。今回は『ハンサムコップ吉永』と『昼行灯小沢』というまた新コンビが登場。同僚という設定で『総長』と『文さん』もちょっとだけ顔を出す。ストーリーは、日本画の贋作にまつわる連続殺人事件。贋作や闇取り引き等美術界の闇を描く。派手さは無いが大阪弁の会話やテンポの良さは定番。ただ、登場人物も多くその関係性が複雑で話の筋が分かりにくかったのが残念。このシリーズここまで来たら捜査一課コンビが全員集合して超難解な事件を解決する作品を期待してしまう。2021/04/08
Walhalla
31
大阪府警シリーズの7作目です。吉永・小沢の両刑事が、初コンビで登場ですね。シリーズでおなじみのブンと総長の出番もあってテンション上がります。今回は、日本画の贋作がからんだ殺人事件を巡りますが、美術界の裏側がたくさん描かれており、いかにも黒川博行さんの作品といった感じですね。日本画五山など、初めて知ることも多くありました。少し切なく悲しい結末でしたが、関西を舞台にしたコテコテの雰囲気と対照的で印象に残ります。2023/04/26
シュラフ
29
この作家さん美術界の内幕にずいぶんと詳しいねと思っていたら、そういえば黒川博行さんは京都市立芸術大学美術学部の卒業でしたね。美術界のことに無縁なわたしにも、あーなるほどこういう仕組みになっているのかと面白く読めました。小説の出来としては粗削りで、ストーリー展開や人物関係も後の作品ほどにはうまく構成されていない。ただ、個々の登場人物ややりとりは関西人キャラをうまく設定しており相変わらず魅力。シリーズものということは知らずにこの巻から読んでしまったのだが、前からの流れというのは関係なさそうで心配はなさそう。2015/11/13