出版社内容情報
三世澤村田之助、江戸末期?明治初期に一世を風靡した歌舞伎の名女形。舞台の最中の怪我から脱疽となり結果として四肢を切断せざるを得なかった悲劇の名優である。明治3年、異彩の画家・河鍋狂斎の描いた幽霊画を発端とした連続殺人事件が、猿若町を震撼とさせる。幽霊画には歌舞伎界を揺るがす秘密が隠されているらしい――。滅び行く江戸風情とともに、その事件の顛末を戯作者見習いのお峯の目を通して丁寧に活写した、第6回鮎川哲也賞受賞作『狂乱廿四孝』。さらに、その後のお峯たちの姿を描いた未完の長編ミステリ『双蝶闇草子』を付す。
北森鴻[キタモリコウ]
内容説明
悲劇の名優・澤村田之助復帰に沸く明治3年、凄惨な連続殺人が歌舞伎界を震撼させる。どうやら河鍋狂斎の描いた幽霊画に、殺人事件の鍵が隠されているらしい。戯作者見習いのお峯はその謎解きに奔走するが―。滅び行く江戸情緒と田之助の姿をお峯の目を通して活写した、第6回鮎川哲也賞受賞作『狂乱廿四孝』。さらに、お峯たちのその後を描いた、未完の『双蝶闇草子』を付す。
著者等紹介
北森鴻[キタモリコウ]
1961年山口県生まれ。駒澤大学卒業。編集プロダクション勤務を経て、95年『狂乱廿四孝』で第6回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。99年『花の下にて春死なむ』で第52回日本推理作家協会賞を受賞。2010年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buchipanda3
105
幕末から明治に名を馳せた女形・澤村田之助(三世)と絵師・河鍋暁斎(狂斎)という二人の実在の表現者をモチーフにしたミステリ。どちらもその人生や生み出したものに妖しげな魅惑を感じる。「狂乱廿四孝」は狂斎による老婆の幽霊絵に込められた謎掛けがメインで田之太夫がどう絡むのかがカギ。当時の歌舞伎界が醸し出す雰囲気も含めて史実と虚構を上手く掛け合わせた仕掛けが見事。「双蝶闇草子」はその続編だが未完の作。現代の事件と併走して描かれ、歌舞伎の演目に見立てた二重謎解きとなる。三部作を予定していたそうで続きを読みたかった。2020/10/28
KAZOO
98
北森さんのデビュー作とこれも絶筆となった作品がシリーズものとして1冊に収められています。デビュー作は昔読んだのですが今読み返してみてもよくまあこれだけ調べられたなあと思います。絶筆の方は、あとがきを書かれていていくつか未完作品を完成させた浅野さんが書かれているのですがこれを完成させるのは難しいのでしょうね。未完の作品は過去と現在を行ったり来たりする話で、かなり面白い作品だと思います。2024/08/22
yu
34
Kindleにて読了。 北森さんの凄さを体感できる一冊。江戸から明治にかけての、時代の変化に満ちた世界。歌舞伎の世界で、脱疽という病に侵され、手足を失いながらも役者として生き抜こうとする田之太夫。主人公は蝋燭問屋の娘ながら、戯作の世界に身を投じるお峯。何より「双蝶闇草子」が未完で、この先を読めないという無念さが、歯がゆくてならない。北森さんの頭の中では、一体どんな三部作がイメージされていたのか。そちらの世界で、是非完成させておいてください。肉体亡き後に、続きが読める事を楽しみにしております。2017/07/04
シキモリ
23
明治初頭の歌舞伎界を舞台に幽霊画を発端とする連続殺人が勃発―。この粗筋だけで既に面白そうな要素がてんこ盛り。江戸情緒の残り火が醸す情景や活き活きとした登場人物達が魅力的でこれだけでも十分に楽しめるが、肝心なミステリーの謎解きも健在で贅沢この上ない。トリックに多少の強引さは感じたが、デビュー作でこのクオリティとは恐れ入る。澤村田之助という悲劇の役者についてより知りたくなった。著者の急逝により、過去と原題が交信するタイムパラドックス的設定の続編が未完のまま収録なのが残念。著者の作品をもっと読んでみたくなった。2020/05/03
小梅さん。
17
久々の北森さん。 『狂乱廿四考』は、未読だったので、未完とはいえ続編とセットでの出版にいそいそと。 カリスマ的な役者である田之助。実在の役者さんなのね。 両手足を病で失うなんて、どれほどの苦衷をなめたのか。 そんな田之助の周囲で続けざまに起こる事件。 探偵役のお峯ちゃんが可愛い。 その他、魯文など実在の人物が生き生きと描かれているのもいい。 事件の真相が、なんとも悲しくてやりきれない。2016/11/09