内容説明
東京で私立探偵をしているぼくはある日、幼馴染みの依頼を受けて久し振りに懐かしい故郷を訪れる。地元一の旧家、木兵衛屋敷の当主のところに不吉な手紙が届いたというのだ。ぼくが着くやいなや、「月夜の晩に火事がいて」というわらべ歌どおりに屋敷から出火し、当主が顔を潰され、先代の息子までもが胸を刺されて死んでいるのを発見される!直木賞作家初の本格長編ミステリ。
著者等紹介
芦原すなお[アシハラスナオ]
1949年香川県生まれ。72年早稲田大学文学部卒。86年『スサノオ自伝』で小説家デビュー。90年『青春デンデケデケデケ』で文芸賞、翌年直木賞を受賞
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
55
都会を離れた地方の町で、わらべ唄をなぞったように起こる放火や殺人。横溝正史と違って笑えるところが独特。そのまま漫才になりそうな会話が物語を進行、いや停滞させているというべきか。大らかというか、あけっ広げで猥雑な雰囲気が、いかにも世界の違いや、時間の流れまで違っているように思わせる。そう思っているうちに見事に本格ミステリに化けるからおもしろい。解説は某有名作品のオマージュだと言っているが、作者はそう思ってないらしい。読んでいて私もそうは思えなかった。解説の勇み足かも。探偵ふーちゃんのその後はどうなったかな。2021/11/10
kishikan
29
芦原さんて、読メの皆様には余り人気がないけど、僕は好きだなぁ。「月夜の晩に・・」は、その芦原さんの本格長編ミステリ。出だしは、主人公の私立探偵山浦が故郷の友人から変な調査依頼を受けるシーン。少し翳のある背景描写が、黒川博行さんっぽい(でも大阪弁じゃない)が、次第に芦原さん特有のとぼけた会話(香川弁?)が加わって、ミステリなんだけど思わず顔がほころんでしまう。全体としては、事件の謎や当事者の心理など非常に深いものがあり、唸ってしまう出来栄え。ただ亡き奥さんとの夢の中での電話はその後どうなったのか、気がかり。2012/03/10
nonたん
22
少し頭に痺れが…。芦原さんのオトボケ調に救われた感じ。 私立探偵のふーちゃんが故郷に呼び戻され、事件が勃発。かなり陰惨。そして、ふーちゃんの捜査で浮かび上がる真相は…。 登場する女性キャラが何ともイイ。イミコさん、好きかもしれずそうでないともしれず…。2011/07/01
ううち
14
長めのミステリー。事件をすらっと解決していくわけではないけど雰囲気は嫌いじゃない。イミコさんの『母屋の一部と離れは焼けそびれておりまして』という台詞がツボでした。会話と美味しそうな食べ物がちょいちょい出てきます。ウドンが美味しそう。イリコはあまり馴染みがないので気になります。2015/01/12
kagetrasama-aoi(葵・橘)
11
再読。主人公の私立探偵、山浦歩の自己探索と殺人事件の謎解きが融合した作品。私はとても好みです。横溝正史氏の「悪魔の手毬唄」を彷彿とさせる、地元のわらべうたに擬えて起こった事件!旧家のドロドロ感も非現実的な分、探偵小説らしい気分に浸れます。讃岐の美味しい食べ物も読みどころの一つ。でも、このお話は続編書けませんよね、それだけが残念な気がします。2018/03/01