内容説明
連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
709
警視庁捜査一課のキャリアとノンキャリアの確執、またはキャリア同士の確執、主人公佐伯の微妙な生い立ちと現在の立ち位置など縦割り文化が顕著な警察組織の中で軋轢を上手く溶け込ませ、デビュー前の素人がここまで書けたものだと感嘆した。それは新興宗教にのめり込む松本の話も同様で、新興宗教の内情と所属する人々の描写は実に迫真性に満ちている。この細やかな内容は経験しないと判らないほどリアリティに富んでいる。ただこれほど読者の共感を得られない主人公も珍しい。慟哭を発するのは果たして佐伯だけか、それをぜひ確かめてほしい。2021/07/18
サム・ミイラ
677
すべてわかってしまった。第二章を読み終えた時に。仮説を立て読み進めるものの「そうならないでほしい」の思いは打ち砕かれる。どこか映画「セブン」に似た展開だ。しかし内容に全く瑕疵はない。よく出来ている。この手の話に慣れすぎたため冒頭から深読みのクセがついてしまった不幸。前知識なしで読むことを強くお勧めする。ただしタイトルのように胸を抉る慟哭の物語かと言えばそうでもない。あくまで叙述ミステリーとして楽しむべき作品だと思う。2016/03/05
青乃108号
611
この手の小説をだいぶん読み慣れてきたせいか、いつも騙されっぱなしの俺には珍しく、かなり早い時点で物語のカラクリに気付いた、でもまさかそんなわけないよね、やっぱり違うよね、あれあれこれは。あれあれ。いやいや。やっぱり思った通りやったんかーい。俺ごときに見破られるとは。ふふふ。勝った。初めて勝った。いや、物語的にはさっぱり面白みは感じなかったけど違った意味でカタルシスを得る事が出来てニヤニヤ笑いが止まらない。2023/04/05
夢追人009
459
貫井徳郎さんのデビュー作で鮎川哲也賞を惜しくも逸した力作ですね。本書を読み終えて思ったのは、受賞が叶わなかった理由について内容的に見てドキュメンタリータッチの本作を堂々と推して賞と認めたくなかったからでしょうね。ミステリーの技巧としては素晴らしく文句のつけようがないのに、こんなにも複雑な思いに駆られてしまうのは珍しいケースだと思いますね。唯、本書にも穴がない訳ではなく最後に未解決の謎を残す事や正統的な推理のプロセスが皆無な点は本格ミステリーとして読むと不満で物足りないかなと判断されたのかも知れないですね。2022/08/31
nobby
446
これはミスリードされずに完勝(笑)二つの立場で交互に語られる展開は読みやすかった。前半の様々な伏線から、松本の正体になんとなく気付けたので、395ページでその名前が告げられた時は「やっぱり!」でも最後の一行が哀しくやるせない…幼女連続殺人と新興宗教というまるで関わりのない重いテーマを次々読ませるのはお見事。どんな人物でもぽっかり抜けてしまうと、何かにすがることを求めるしかないのか。2014/03/14
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