出版社内容情報
手話通訳士の荒井尚人は、コミュニティ通訳のほか、法廷や警察で事件の被疑者となったろう者の通訳をする生活の中、場面緘黙症の少年に手話を教えることになった。めきめきと上達した少年はある日、殺人事件について手話で話し始める――。NPO職員が殺害された現場は、少年の自宅の目の前だった。果たして少年の手話での証言は認められるのか? ろう者と聴者の間で苦悩する手話通訳士を描いた『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』(文春文庫)に続くシリーズ第2弾、待望の文庫化。
内容説明
荒井尚人は、ろう者の親から生まれた聴こえる子―コーダであることに悩みつつも、ろう者の日常生活のためのコミュニティ通訳や、法廷・警察での手話通訳に携わっている。場面緘黙症で話せない少年の手話が殺人事件の目撃証言として認められるかなど、荒井が関わる三つの事件を優しい眼差しで描いた連作集。『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』に連なる感涙のシリーズ第二弾。
著者等紹介
丸山正樹[マルヤママサキ]
1961年東京都生まれ。早稲田大学卒。シナリオライターとして活躍ののち、松本清張賞に投じた『デフ・ヴォイス』(文藝春秋、2011年/のちに『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』に改題。文春文庫)でデビュー。同作は書評サイト「読書メーター」で話題となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
286
デフ·ヴォイス②。「龍の耳」の意味を知る時、心震えます。聴覚口語法学習など、ろう者を取り巻く状況が、さらに掘り下げて描かれます。ろう者が自分の言葉を持つことの重要性を知ることができます。2作目にして、より深みが増した印象です。2022/04/06
おしゃべりメガネ
140
ハードカバーで読んで以来、四年半ぶりの再読でした。あとがきにも書いてありましたが、まさか続編がという驚きと、やっぱり「荒井」さん、帰ってきてくれたという安堵がミックスされ、期待が必然的に高まるなか、軽々とクリアしてしまう本作は読みごたえ十分です。今回は「ろう者」のみならず、あらゆる場面での手話の活用を学ばせてくれます。特に表題作は前作同様、ミステリーとしても非常にレベルが高く、かつ'緘默症'について新たな知識を深めるコトができます。「荒井」さんファミリーの更なる幸せを願って第三弾を読みたいと思います。2022/09/04
mint☆
138
"龍の耳"とはそういう意味だったのか。タイトルの意味がわかると感慨深い。この本を読んでから何度も通ったことのある道に聾学校の看板があると気がついた。今まで全然目に入らなかったのが信じられない。前作同様ミステリーでもあり、ろう者を取り巻く生きにくい環境を丁寧に描いていている。発達障害は親の責任、のような「正育学」の法案が通ったら怖いなと現実じゃないのにハラハラでした。今作もよかった。次も読みます。2021/11/20
五右衛門
110
読了。待ちに待って読み終わりました。以前にも増してミステリー感が強くなっていませんか?全編を通じて主人公の孤独感を引きずっていましたが娘の素朴さ、緘黙症の彼との通じ合い辺りは心が和みました。手話を通じて本人たちは唯一の言語、一般人には秘密の言語的な行き違いにもハッとさせられました。最後はハッピーエンドですよね。家族が出来たんですよね。次巻も楽しみに待っています。文庫になるの遅くありませんか?2021/03/01
Happy Dragon 🐉
95
(^_^)v デフヴォイス法廷の手話通訳士シリーズ第ニ弾。 冒頭、タイトルにある「龍の耳」について書かれている。なるほど、そう言うことかと惹かれながら読み進める。 物語は、前回の物語から2年が経ち、主人公の立ち位置と周囲の状況も変わっている。ただ、主人公から受ける印象は、前回同様に、常に「葛藤」と言う表現がつき纏う。その葛藤は、手話通訳士として、「正しく聴く」こと、「正しく伝える」ことが伝わってくる。 私は正しく「聴く」、「伝える」ことができているのだろうかと、ふと思った。 ありがとう! 感謝!2022/05/01