出版社内容情報
小説『昏い天使』で新人賞を受賞した、フランス帰りの美青年作家・宗像冬樹は、予告した第二作『黄昏の館』を書きあぐね、酒浸りの日々を送っていた。その才能を信じる担当編集者は、彼の記憶に残る山奥の豪壮な西洋館を探すよう助言する。しかし、たどり着いてみると、幼き日に母と一夏を過ごしたその館には恐ろしい秘密が……。消えた幼女、秘密の地下室、妖しい美女……。謎の洋館の秘密とは……? 笠井潔のめくるめく幻想世界。
内容説明
小説『昏い天使』で新人賞を受賞したフランス帰りの青年作家・宗像冬樹は、自ら予告した第二作『黄昏の館』を書きあぐね酒に溺れていた。担当編集者は彼が幼い日に母親と一夏を過ごした山奥の豪壮な石造りの洋館“黄昏の館”を探し出すよう進言する。少年時代のこの世ならぬ体験をたどるために。母からはすべてを忘れるよう厳命されていたのだが。知性派・笠井潔の幻想洋館綺譚。
著者等紹介
笠井潔[カサイキヨシ]
1948年東京生まれ。79年、デビュー作『バイバイ、エンジェル』で角川小説賞を受賞。98年、『本格ミステリの現在』編纂で日本推理作家協会賞を受賞。2003年には『オイディプス症候群』と『探偵小説論序説』で本格ミステリ大賞小説部門と評論・研究部門を同時受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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marty@もぶおん学
8
『昏い天使』という小説で一躍脚光を浴びた青年作家は、自ら予告した続編『黄昏の館』が書けず、苦悩の日々を送っていた。2作目の鍵となるのは、彼が幼少期に訪れたとある館での失われた記憶なのだが、編集者の助けも借りて再訪を果たす。そこで待ち受けていた意外な結末は……という筋書き。いわゆる館ものの本格ミステリとは違うのだが、ホラーや伝奇的要素も溶け込み、ラストは文学的な出だしからは予想もつかない展開で楽しく読めた。創元推理文庫版は2020年だが初出は1989年ということで、やはり世紀末的な匂いを感じる作品。2020/05/16
YH
3
なんというかすごいごった煮感。悪魔の秘儀に義経伝説、ストーンサークルって!でも宇月原さんの信長を読んだ時のような衝撃。煮込まれている要素が好きな世界なのでまあ、楽しめました。2022/01/02
読書と紅茶🥰
3
直近で読んだ笠井作品が小難しかったので身構えて読み始めたのですが…こちらは衒学的要素は少なめで(ゼロではない)読みやすかった。曰くありの寂れた館、禁忌の地、呪われた一族等、そそる設定満載。2021/03/31
つっきー
3
ゴシックロマン小説かと思いきや、古代の巨石文明を解き明かす妖奇譚だった。 前半から中盤にかけてはゆっくり丁寧に説明がなされていたが、最後の急展開にはちょっとついていけなかった。2021/01/26
Jimmy
2
実は意外と面白かったです。笠井潔の奇譚となればお得意のペダンチック押しで理解不能になるか、幻想押しでこれまた読み進められなくなるか、かと思いきや、非常に読み進みやすく、さらにはあまり場面展開しない割にテンポも悪くないし、400ページなのに割とコンパクトな印象が残る。しかもオチは奇譚ですが、途中までは本格ミステリといっても良いぐらいのきちんとした仕掛けがありますので、そういう意味でもちゃんと面白い小説でした。2020/07/29