出版社内容情報
●上橋菜穂子氏推薦――「日常が〈物語〉に変わる、その瞬間を鮮やかに浮かび上がらせた名品」
「私たちの日常にひそむささいだけれど不可思議な謎のなかに、貴重な人生の輝きや生きてゆくことの哀しみが隠されていることを教えてくれる」と宮部みゆきが絶賛する通り、これは本格推理の面白さと小説の醍醐味とがきわめて幸福な結婚をして生まれ出た作品である。異才・北村薫のデビュー作。
*第2位『このミステリーがすごい!'92』国内編
*第7位『もっとすごい!!このミステリーがすごい!』1988-2008年版ベスト・オブ・ベスト国内編
内容説明
女子大生と円紫師匠の名コンビここに始まる。爽快な論理展開の妙と心暖まる物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
446
オススメ本。ちょっと驚いた。日常を美しい文章で淡々とつづったかに見える本だが、散りばめられた一見無関係な事柄を組み立てていくと、背景に溶け込んで隠されていた様々な非日常が浮かび上がってくる。ありがちな見せかけの裏に深淵が隠れている、そのギャップがミステリーの醍醐味なのだろう。知人にオススメされなければ手にも取らなかったと思うが、小説の新たな一面を垣間見ることができ幸運だった。2016/12/15
Tetchy
363
傑作!!“本を読む”ことに幸せを感じ、この作者に出逢った事が最大の幸福。2008/10/17
seacalf
356
本屋さんでよく見かけたことがあるこの本。ようやく手にしたのは東大王、水上のおかげ。ミーハーである。様々な形態の小説が跋扈してる現代においては目新しくはないが、身近な不思議を推理するスタイル、当時は斬新だったんだろうな。時代を感じさせる風合いは懐かしく、それが逆説的に新鮮で面白い。噺家の探偵なので落語の蘊蓄、そして文学畑の知識に強いと読みやすい。逆は辛い。どうも男性が描く女子大生の一人称というのは苦手だ。周りにいたけどね、リアルにこういう素敵な子。こういう時、読書仲間がいたら忌憚のない意見を聞けるのになあ。2018/09/26
fukumasagami
240
文学科の女子大生をワトソン役に落語家をホームズ役に配した連作ミステリ第一集。女子大生と落語家の取り合わせが斬新で、好奇心旺盛な彼女が日常に顔をのぞかせる謎を拾い上げ、師匠たる落語家がそこに関わる人物の過去を読み解いていく。主人公の「わたし」の無垢で知性的な成り立ちが爽やか。2010/09/20
佐々陽太朗(K.Tsubota)
221
何気ない日常が、そこに潜む謎によって色合いを与えられる。人が死なないミステリは良い。誰にでもありそうな日常だけに、かえってリアリティーがあるからだ。ミステリとして秀逸なのは「赤頭巾」。たまたま歯医者の待合室で隣り合わせたおばさんとの会話で、子供の頃からほのかなあこがれを抱いていた女性の秘密と意外な一面があぶり出される。表題作「空飛ぶ馬」は温かみがあってすばらしい作品だ。クリスマスにもう一度読み返すのもよいだろう。クリスマスに「空飛ぶ馬」を読み、大晦日には落語「芝浜」を聴く。心温まる年の瀬になるに違いない。2012/04/10