内容説明
三度目の刑務所生活で、スリ師戸並健次は思案に暮れた。しのぎ稼業から足を洗い社会復帰を果たすには元手が要る、そのためには―早い話が誘拐、身代金しかない。雑居房で知り合った秋葉正義、三宅平太を仲間に、準備万端調えて現地入り。片や標的に定められた柳川家の当主、お供を連れて持山を歩く。…時は満ちて、絶好の誘拐日和到来。三人組と柳川としの熱い日々が始まる!第32回日本推理作家協会賞長篇賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🐾Yoko Omoto🐾
175
誘拐ミステリの傑作として名高い名作中の名作。身代金の額やその受け渡し方法、読めない演出から事件の落としどころまで、そのスケールの桁違いな大きさには、最後まで本当にワクワクさせられた。とし子刀自と誘拐犯たちのやり取りから、事件の構図に予想のつく部分もあるにはあるが、特に動機については、単純だからこそ胸に迫るものがあり印象深い。悪事を働きながらも決して悪人ではない誘拐犯たちと、その育ちゆえ猜疑心や虚栄心に苛まれてきたとし子刀自。両者の"分相応"に帰結したような、納得のラストにも余韻が残る。本当に面白かった。2016/10/03
HoneyBear
172
快作。怪作というべきか。スケールが大きくて楽しい仕掛けが満載。ほのぼのとしたところも。ネタバレになりそうなのでここまでにします。2016/01/09
nobby
155
読み友さんの感想から興味持って読んだ。出所した凸凹3人組が大地主のお婆さんを誘拐。いざ要求された身代金は百億円。その後も警察やらを翻弄し続ける奇想天外な物語を満喫。“百億円”とか“4万ヘクタール”とか全く見当もつかない規模が真面目に検討されているのが面白い。まずは、お婆さんスゴい!(笑)最後の章で語られる3人組と百億円の行方が微笑ましく、まさに爽やかな読後感。2015/05/06
chiru
127
週刊文春『20世紀国内ミステリー第1位』 小説に酔わされ、幸せな気持ちになる一級品。 誘拐された82歳の老婆の身代金は100億円。 培ってきた知恵と卓越した頭脳をフルに生かし、誘拐犯の若者たちに的確なコマンドを次々に打ちだし『誘拐事件』の実質的なリーダーの座につくおばあちゃん。 彼女の深い人間性に触れ心に変化が生じる憎めない犯人たち。 空前のスケールで行う100億円の奪取。 予測のつかない意外な終局の謎解きまで完璧な楽しさにあふれてる。 数年ぶりに読み返しても、面白くて夢中になれる名作です。 ★5⤴️2019/01/17
おいしゃん
124
【日本推理作家協会賞作品】出会えて良かった!と思える作品。こんなエンタメ性が高く、かつ人情味あふれる壮大なミステリー、もっと評価されてもいいはずだ。と、思ったらやはり立派な賞を獲っていた。読書会でオススメされた本だが、さすが読書家さんの目に狂いはないな、と感心。あらすじは、少年3人がお婆さんを誘拐するのだが、実はそのお婆さんは只者ではなくて…。犯人の少年たちすら予想もしないような、日本全体を巻き込む展開、それでいてしっかりリアルなのだから、夢中になれないわけがない。今年のベスト3に入れたい。2015/12/22