出版社内容情報
戦中の台湾、本島人の邸の庭で起きた日本軍人の決闘騒ぎ。一方は銃殺され、一方は頭部を殴られ意識不明の状態で発見された。単純な事件と思われたが、現場に残された二挺の拳銃はどちらも指紋が拭われていた。現場の庭は三方を壁と扉に囲まれ、残る一方を闇の幕で隔てられた一種の密室であり、謎は次第に混迷の色を深くしてゆく……。推理と恋愛と幻想が混然一体となった、戦後を代表する本格推理の逸品を創元推理文庫に収録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
YO)))
31
素晴らしかった。ミステリとしての構成や叙述も凝っていて読ませるし、何より台湾の風物の豊かな色彩と、人物の陰影-否応なく戦争の影が加えられた-とのコントラストが鮮やかで、血腥い殺人事件が何か果敢ない夢幻劇のように展開する、嘗てない読み心地の佳品。2017/12/27
geshi
28
普通ならこの倍ぐらいあっても充分なほどの凝りに凝ったプロットで、単純と思われた事件に疑問点が出て推理がこねくり回される徹底したパズラーっぷり。中盤での思わぬ仕掛けの発動、後半のアリバイ崩し検証、推理小説のできることを濃縮して一つの作品に詰め込んでいる。色彩豊かな台湾の風景や複雑な人間関係が鮮やかに繰り広げられる文章は骨太で、圧倒的な読ませる力を持っている。最後に辿り着いた真相が恋愛感情と結びつき、この物語が「語られるもの」として昇華されるラストが切ない。2018/01/30
タカギ
22
ノスタルジックな推理小説(個人の感想です)。時代が終戦前であるとか、舞台が台湾であるとかがそう感じさせるのかなあ。亜熱帯の島で見る夢みたいな感じもする。それが「幻想」なのかな。「リゾラバ」という言葉が脳裏をちらっとよぎったり。特殊な読み方の漢字が多くて、なんとなく読んだ部分も多い。万人がひれ伏す推理ものではないけれど、いかがわしい雰囲気が私は結構好き。2018/10/28
有理数
20
日影丈吉の最高傑作、という触れ込みで読みました。スクラップ&ビルド、あちらを立てればこちらが立たずのパズラーですが、手記形式でもあり、恋と台北の綿密な描写もあり、これをひとつの作品に仕立て上げるのは並の技じゃありません。何より「会話」が最高。どなたもクールで熱く、特に第二部の解決篇の会話の応酬には痺れました。真相に驚愕というようなことはなかったのですが、面白かったです。2017/12/29
ネムル
14
戦中の台湾を舞台に、妙に凝ったパズルと恋の冒険へ誘う迷宮のような小説だった。カラフルな闇にうっとりさせられる、素晴らしい。2018/01/20
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