内容説明
甲府有数の名士・八田家の当主が癌の告知を苦にして自殺を遂げた。一周忌が間近に迫り、遺族によって追善興行が計画されるが、既にそのとき八田家の人びとは“猥の悲劇”に呑み込まれた後だった―当主が遺した「死のノート」に操られるようにして次々と起こる事件の行方は?郷愁豊かに展開される本歌取りミステリ『探偵の四季』、会心の第2幕は“甲府のドルリー・レーン”。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
81
探偵の四季シリーズ第2弾。今回はエラリー・クイーン氏「Yの悲劇」を、巧く操った感じが中々良い。ヨーク・ハッターの死から始まった連続殺人、本作は八田欲右衛門である。確かに本歌取りには違わないが、「猥の悲劇」という処がみそであり、ミステリとしては「Yの悲劇」だけに留まらない。特徴としては横溝作品の様に感じられる処もあり、岩崎作品のスタイルなのだろう。本歌作品を知っているからこそ、注意しても注意しても作者の思惑に引っ掛かるのではないだろうか。この雰囲気や謎解きは、私にはたまらない。冬春の後も、作品を読みたい。 2019/02/25
みっつ
21
「探偵の四季」シリーズ2作目のモチーフは「Yの悲劇」。遊び心が溢れ過ぎている登場人物名も好きだけど「甲府のドルリー・レーン」こと旅役者・乱菊の存在感に魅了された。立ち振る舞いは勿論、役者らしいラストまで魅せる魅せる。故人の残した「殿様ノート」を続発する事件の軸にしつつ、複雑に絡みあった人間関係が鮮明になると共に次第に歪な様相を呈してくるのが圧巻。とても満足な読後感。今後は「探偵の冬~」の文庫化、シリーズの末尾を飾るであろう「探偵の春~」の刊行を心待ちにいたします。2010/10/06
geshi
19
自殺した気狂い八田家の家長の残した遺言書と自殺の手段を研究したノートをめぐる、旧家のドロドロした愛憎と連続殺人。そこに現れる耳の不自由な旅役者。『Yの悲劇』を元にしながら、そこに捻りを加えて新しいミステリーにしようとする意気やよし。クイーンを本歌取りするなら推理の方も論理的であって欲しいところだが、猥という言葉が示す通りの二転三転する人間関係はよく出来ている。『Yの悲劇』と思わせて実は真相は別のクイーン作品というミスリーディング。2014/12/02
kagetrasama-aoi(葵・橘)
2
岩崎 正吾さん。この作品大好きなんですよね!第二弾!2014/03/27
ヘブンリー
2
実は「Yの悲劇」を読んだのは、ずーーーっと以前で、覚えていたのは犯人だけ。だから、二つのどこが似ているかとかは、残念ながら全然わからなかった。でも、これはこれでとても楽しめました!それに犯人もクィーンのとは違ってた。八田家のその後が気にかかるけど、これはこういう終わり方でいいんでしょう。2012/03/03