内容説明
残り少ない暑中休暇を過ごすべく、秩父の『りら荘』に集まった日本芸術大学の学生たち。一癖も二癖もある個性派揃いである上に各様の愛憎が渦巻き、どことなく波瀾含みの空気が流れていた。一夜明けて、りら荘を訪れた刑事がある男の死を告げる。屍体の傍らにはスペードのA。対岸の火事と思えたのも束の間、火の粉はりら荘の滞在客に飛んで燃えさかり、カードの数字が大きくなるにつれ犠牲者は増えていく。進退窮まった当局の要請に応じた星影龍三の幕引きや如何?贅を尽くしたトリックと絶妙な叙述に彩られた、純然たるフーダニットの興趣。本格ミステリの巨匠鮎川哲也渾身の逸品。
著者等紹介
鮎川哲也[アユカワテツヤ]
1919年2月14日、東京生まれ。『黒い白鳥』『憎悪の化石』で第13回日本探偵作家クラブ賞受賞。『黒いトランク』『死のある風景』など著書多数。第1回本格ミステリ大賞特別賞、第6回ミステリー文学大賞特別賞受賞。2002年9月24日逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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🐾Yoko Omoto🐾
176
これぞまさに“THE本格推理小説”!!謎解きフーダニットの見本とも手本とも言える端整な造りに、懐かしさと痺れるような快感を覚えつつ堪能。愛憎渦巻く本音を潜ませた学生たち、笑えるほどに犯人に翻弄される刑事たち、終盤に満を持して登場する名探偵とお約束的な登場人物は王道中の王道。殺害現場に残されるトランプの謎を始め事件の一連の真相が解き明かされる解決編では感嘆と唸り声しか出てこず、全てが終わったあとの哀愁を漂わせるラストまで本格ものの様式美に酔いしれた。鮎川氏に影響を受けた作家が多いことに大きく納得できる名作。2015/11/15
五右衛門
84
読了。やはり本格推理小説、堪能しました。相変わらずものの見事に犯人は判らないまま終盤の名探偵による推理で一件落着❗しかも最後の被害者だけ別の犯人なんて全く予想出来ませんでした。全く持って二人の刑事さんと同感です。現場に居たにも関わらず...これだから『本格』やめられません。星影さんてシリーズあるんですか?探して見よーっと❗2019/04/21
chiru
84
りら荘に滞在する、個性的な学生7人が巻き込まれる連続殺人事件。 トランプの意味は? 動機は? ぜんぜん推理できなかった…。 でも、実は怪しいなって思ってた人だけ合ってたからうれしかった。 警察がいるのに止まる気配のない殺人事件…なのに学生たちが平然としてるのはちょっとやだな(^_^;) 謎解きはきれいな伏線回収で見事でした! ★32018/03/17
ミカママ
73
本格推理小説は久しぶり。これは古典作品のひとつなんでしょうか。ミステリ好きな友人に薦められたもの。子どものころ、胸を熱くして読んだ、江戸川乱歩シリーズを思い出しながら読み進めるうちに、なんか違う・・・という気持ちに。表現がくどいし、古臭いし(失礼)、最後までのめり込めませんでした。イマドキのミステリーに慣れてしまった身には、純推理小説は合わなくなってしまったのかも。2014/12/04
goro@一箱古本市5/5
67
トリックは先にやったもの勝ち。この作品が1957年に出た段階でその後に続く作家は厳しいと思えるね~。閉ざされた山荘という設定ではないけれど、連続殺人に現場に残されたトランプ。このトランプの意味など良いよね~。犯人の思惑通りに読み進めておりました。そして終盤にやっと登場する星影竜三が冴えてる。まぁ冴えてなければ解決できないわね~。次は鮎川氏のデビュー作「黒いトランク」に挑戦です。2020/04/03