内容説明
弁護士の話を聞いた時から“三番館”のバーテンに教えを乞う心算だった。この件が手に余ることは判りきっている。しかし泡沫探偵にも五分の矜恃、バーテンの質問に調べていませんと答えるわけにはいかない。仕事に対しては鬼となるのが取柄の「わたし」だ、一朝事あらば甲羅を経た愛車に鞭打ち、月極逆旅で歓を尽すも手控えて精励恪勤。解決の美酒に酔えば、すべて世は事もなし。
著者等紹介
鮎川哲也[アユカワテツヤ]
1919年2月14日、東京生まれ。『黒い白鳥』『憎悪の化石』で第13回日本探偵作家クラブ賞受賞。第1回本格ミステリ大賞特別賞、第6回ミステリー文学大賞特別賞受賞。2002年9月24日逝去
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
353
★★★☆☆ 〈三番館〉シリーズ第3作目。 軽く事件前後のパートが描かれ、それを探偵「わたし」が調査するものの手に負えず、バー三番館のバーテンに相談して推理してもらうというお馴染みの短編集。 続けて読むとマンネリ感は拭えないものの、探偵氏の高田純次さんばりに軽い性格が楽しい。 犯人特定のロジックが明快な表題作、カーばりの密室殺人にて単純な真相を看破する『マーキュリーの靴』が特に好みだが、全体的にロジカルで本格派の作品ばかりなのが良き。2023/09/29
セウテス
66
三番館シリーズ第3集。今回は消失ものを含む、バリエーションに富んだ6作の短編集。「ブロンズの使者」は、小説を巡り二人の人物が自分の作品であると言い張るのだが、どちらが本物の作者なのか。「夜の冒険」、浮気調査で後をつけていた男性の行動が、不思議でならない。答えが分かると納得なのだが、設定の妙に言葉が無くなる。「マーキュリーの靴」「塔の女」は、犯行現場から何かが消失する。ちょっとした眼の着け処の違いで、目の前の暗闇はすぅっと消え去る。どの作品も見方を変えると真実が解る、何とも巧みな洒落たオチのオンパレードだ。2015/11/09
nemuro
42
<三番館>シリーズ第三集。本年4月「ブックオフ滝川店」で購入。読メ(2009年1月登録)の既読は9冊(8作品)。2度の函館勤務時に図書館本で『クイーンの色紙』(2010年9月読了/2016年3月再読)から『モーツァルトの子守歌』(2016年5月読了)まで8冊と『黒いトランク』(2022年12月読了)。うち<鬼貫警部>シリーズが2冊で残りは<三番館>シリーズ。太った弁護士が「わたし」に依頼する難事件を、その実、達磨が髭を剃ったような風貌の「三番館」のバーテン氏が謎を解く。安楽椅子探偵譚は常に濃厚なる味わい。2024/09/07
KAZOO
21
著者の「三番館」シリーズの第3集です。6つの短篇が収められていてどれも水準以上のものです。最近はこのような作品が少なくなって、エンターテイメント性ばかりを追っている作品が多くなっています。時たまこのような作品を読みかえすことで自己満足しています。2014/08/19
coco夏ko10角
20
三番館シリーズ第3弾。今回は6つの作品収録。探偵さん、早い段階でバーテンさんに頼ることを考えるようになってる…。『ブロンズの使者』と『マーキュリーの靴』がよかった。2018/10/07