内容説明
『盲獣』いつにない早起き、ありふれた日常だったはずの朝が始まる。雨に降りこめられた展覧会場で、森厳な空気に相容れぬ雰囲気を醸す人影を見た水木蘭子は、凶事の予感に怖気をふるう。それは魅入られたかのように盲獣の魔手に搦め取られていく自身への哀歌にも似て…『地獄風景』旧家の一人息子が私財を蕩尽した大遊園地―さながら怪奇のおもちゃ箱―に集まる、名にし負う猟奇の紳士淑女たち。ひとり、またひとりと増える犠牲者を後目に殺人遊戯はエスカレートしていく。「犯人は誰か、その理由は」と公募された犯人当て懸賞小説。共に竹中英太郎画伯の華麗な挿絵を付す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
148
★★★☆☆ 乱歩作品の中でもトップクラスにエログロな中編2編を収録。 表題作は主役の盲獣がエロと殺戮の限りを尽くす話。今でいうところのスプラッター・ホラー。 スプラッターというジャンルが誕生する約半世紀も前にこれほど徹底したゴアストーリーを書いていた乱歩の才能には恐れ入る。 『地獄風景』は『パノラマ島奇談』をスリラー仕立てにして、とにかく人を殺しまくる作品。ミステリ部分が雑なのであまり好みの作品ではないが、乱歩ワールドは味わえる。2020/04/03
はつばあば
63
久々の江戸川乱歩の盲獣を久木田 高明さんの絵(漫画)で読んだら余りに生々しい。昔も今も想像力に欠如しているようだ・・グロいって思わずに読んでいたもの・・。2018/02/15
kaoru
48
完全版「盲獣」が目的で購入。作者さえ吐き気を催すために削除された章は、さすがに悪趣味でグロい。懸賞金付き推理小説「地獄風景」は勢いは良いのですが、推理小説としては問題なのと劣化版「パノラマ島奇談」なのが残念。2017/07/19
Ryuko
34
子供のころ、乱歩が苦手だった。とにかく気持ち悪くて怖かった。表紙だけで無理だった。大人になってからは、気持ち悪さも怖さも面白さとなっていったけれども、これはやり過ぎの乱歩先生。ご本人は、全集に入れたくなかったとおっしゃっているが、これはこれで本当に乱歩らしい作品とも言える。2019/02/15
更紗蝦
26
『盲獣』と『地獄風景』が収録されています。本文と一緒に、挿絵、次回への引き、謝罪、犯人当ての懸賞の応募要項が収録されているため、雑誌掲載時の雰囲気が伝わってくるのがとてもよかったです。ジャンルとしては両作品とも「サイコキラーもの」ですが、精神にジワジワくるタイプではなく、視覚・聴覚・触覚・嗅覚が刺激されているような感覚に陥るタイプの作風です。2020/08/05