内容説明
とある貸事務所の十三号室を借り受けた奇妙な紳士。彼は、さっそく新聞に女事務員募集の記事を出し、応募者の中からひとりの美女を選び出すと自宅に連れ帰り、刃物類が転がる不気味な風呂場へと案内するのだった…。かくして、東京中を震撼させる恐るべき事件が続発する。この残虐な殺人鬼に対するは民間の犯罪学者畔柳友助。雑誌連載時に大好評を博した、手に汗握る長編推理。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
127
★★★☆☆ 子供の頃に恐怖感に震えながら読破した思い出深い作品。 乱歩のベストだと思っていたが、年取ってから読むと犯人も手口も分かりやすく、展開もご都合主義過ぎて評価を下げた。 序盤は蜘蛛男の残虐さに嫌悪を感じつつも先が気になってしまうのだが、2人目の犠牲者辺りで真相に当たりがつく。その後はどんどん雑な展開となり、富士洋子の蜘蛛男に対する行動は伏線がないため訳が分からないし、蜘蛛男のパノラマ館作りの手際も杜撰過ぎる。更にエンディングが酷い。 とにかく里見姉妹とその母親が哀れで、それを引きずった。2020/03/19
えにくす
113
図書館本。蜘蛛男と言っても、映画のスパイダーマンではない。壁を登るわけでも、天井を這うわけでもない。江戸川乱歩が戦前に書いた、推理小説だ。若い自分の好みの女性ばかり狙う、恐るべき連続殺人犯。対抗するのは名探偵として名高い、犯罪学者の畔柳博士。しかしことごとく博士は、出し抜かれる。そして後半に我らが名探偵明智小五郎が登場して、蜘蛛男との壮絶な闘いが始まる。果たして両者の死闘の行く末は?恐るべき蜘蛛男の正体は誰だ?当時の挿絵が、非常に雰囲気が有る。90年前の怪しい魔都東京へ、読者諸君よ、いざ旅立とう!★3.52022/08/16
セウテス
66
〔再読〕テレビドラマ「江戸川乱歩シリーズ明智小五郎編」は大人気の番組で、数多くの作品が作られました。私も楽しみにしたテレビシリーズですが、その第一回の記念作品が「蜘蛛男」でした。ミステリーとしてより、冒険活劇の様な印象を受けます。しかし当時は、読者と言うより国民が此のような作品を、江戸川乱歩先生に望んだ結果だと思います。傍若無人で神出鬼没、人を殺す事その事のみに自分の存在意義を持つ異常犯罪者。発売当初の挿絵や予告宣伝などもあり、一風変わった文庫作品になっていて、明智小五郎との闘いを、素直に楽しめました。2015/04/23
いたろう
44
(再読)以前読んだはずだが、かなり昔なので、内容を全然覚えていなかった。これは明智小五郎ものではなかったかと思い始めた後半で、やっと明智が登場。それにしても、こんな作品だったか。乱歩自身が「ルパンものと涙香の書き方を混ぜ合わせたようなものをめざしたのだが、思うように行かなかった」「私流のエログロになってしまった」と書いている通り、推理も何もあったものではない、単なるエログロ作品に。乱歩の作品は、概して、明智小五郎が出てこない方が面白い。スーパーマン・明智が出てくると、何でもありになってしまいかねない。2017/11/20
北風
41
前回蜘蛛男を伊丹十三のイメージで読んだので、今回は山本學のイメージで読みました。でもやはり思うのは、東映が作った仮面ライダーって絶対これの影響受けてるよなあ…。おやっさんは波越警部で、戦闘員は平田。違和感なし。2016/02/05