内容説明
純日本的な家屋における密室状況下の殺人事件を、心理的盲点を衝いて見事に解決してみせるのが、後にわが国を代表する名探偵といわれるようになった明智小五郎である。本書には、その「D坂の殺人事件」をはじめ、大乱歩の短編における傑作を集大成した。「赤い部屋」「白昼夢」「毒草」「火星の運河」「お勢登場」「虫」「石榴」等全10編を収録した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
150
★★★★☆ 10編の短編が収められている。 どの作品も独特の雰囲気があって良い。 乱歩と言えば猟奇・エログロの描写が特徴であり、その意味では『白昼夢』と『虫』が特に良かった。 ただし、乱歩初心者に薦めるとすれば他の短編集にするかな。 表題作は明智小五郎のデビュー作。作品の雰囲気こそ悪くないが、明智の心理分析はあまり説得的ではないように感じた。2020/03/18
勇波
78
久々の乱歩です。。初読みの作品ばかりで非常に楽しめました。あまり乱歩には詳しくないけど、思ってたより色んな幅のある作品書いてたんだ。しかもどれもインパクト大。中でも『お勢登場』。。物語は結構キツイ話なのになんでこんなタイトルになったんだ。正義の味方が出てくるのかと思っちまったf^_^;)背表紙がカッコいいので創元推理文庫で集めようと思います★2015/09/09
miyumiyu
77
中学の頃少年探偵団シリーズにハマり、私が推理小説好きになった原点が江戸川乱歩。大正〜昭和初期のレトロで淫靡な雰囲気。表題作と「二廢人」「石榴」は、推理小説の基本とも言うべきトリックとどんでん返しがおもしろい。「赤い部屋」「お勢登場」の狂気と後味の悪さ、そして「虫」のおぞましさに心底ゾッとする。人間の奥に潜む狂気や悪意を描いた、究極のブラック小説だと思う。謎解きもブラックも本格派。日本の推理小説の礎を築いたとされる乱歩の世界を、存分に堪能できる1冊。2015/08/26
Tetchy
76
本書を読むと、やはり乱歩は短編向きかとも思ってしまう。長編に出来不出来の差があるのに比べ、本書に収められている短編は全てが切れ味が鋭い。暗闇の怖さを知り、人間の表層からは見えない得体の知れなさを色んな趣向を交えて語る。さらに「二銭銅貨」や「心理試験」の推理小説としての完成度の高さ。明智小五郎が初登場する表題作は好き嫌いが出るだろうけど、ここから一連の名シリーズが始まったのだから読み逃すべきではない。日本ミステリの巨人がまだ巨人ではなかった頃の作品だが、その片鱗はここに確かにある。2009/07/22
芽
43
「毒草」「防空壕」以外は読了済の作品だった。 解説に削除された続きも掲載されていたのが嬉しい。 しかも、お勢と明智小五郎を闘わせてみたいみたいなことを乱歩が言っていたようで是非見てみたかった。 2015/04/04