感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
333
短編ではこう、長編ではこう、という風に、ブレがない作家だったのだろうなと思う。何故そこまでヴァンダインに入れ込んでいたのか、今となっては疑問だが、それが名作『殺人鬼』誕生の元になっているからわからないものだ。『殺人鬼』は、登場人物の少なさから、消去法で犯人がわかってしまうという欠点はあるものの、この時代で、これだけ読みやすくて理知整然とした文章であることに加え、探偵対決を盛り込み、本家と一線を画そうという野心作。短編はどれも、星新一のようなエスプリが効いていて、『彼が殺したか』などは一周回って現代的。2019/01/05
藤月はな(灯れ松明の火)
45
只今、ジュンク堂のハヤカワポケット文庫フェアで『殺人鬼』が対象となっています。そこから興味を持って他の短編も読めるお得な創元文庫版を選んだのですが・・・。階級で差別され、証拠がなければ無罪放免、または冤罪と成り得る法への恨みが篭った短編と本格ミステリー長編である『殺人鬼』。謎や真相への伏線は緻密且つ遣る瀬無いものばかりなのに加害者の男どもが皆、反吐が出そうなくらいの行き当たりばったりのロマンチストなのがウンザリ。『殺人鬼』には『グリーン家の殺人』のネタバレがあるのでご注意!2014/05/28
geshi
34
法と正義の陥穽を突く短編の方が好きだし問題提起は決して古びていない。特に大岡裁きを本歌取りした『殺された天一坊』がベスト。法を正義と信ずる者がその法に囚われ、肥大化した権力が正義を歪ませる。あえて大岡の名前を書いていないのも、事態を隠しておきたい心理が見えて良い。長編探偵小説の『殺人鬼』は戦前としては突出して緻密に考え抜かれたフェア精神の本格。ただし全てを理詰めで検証しているのが堅苦しく感じてしまう。伏線は張られているが、犯人の心理操作がうまくいきすぎなのも、良くも悪くも探偵小説的。2017/04/17
ホームズ
17
前半の短編集ははじめて読む読むものばかりで楽しめた(笑)『殺人鬼』はハヤカワミステリで読んだけどやはり面白い(笑)『殺人鬼』を読んだだけではわからなかったけど短編を読む限りは結構性格の悪い作者のような印象(笑)もっと他の作品を読みたいな(笑)この本はちょっと厚くて読みにくい。2011/11/07
Ribes triste
7
読み始めて衝撃。短編もさることながら、長編「殺人鬼」も面白かった。昔、新聞小説で読んでた人たちはさぞや楽しかったに違いない。こういう本に出会っちゃうから、本屋巡りが止められないのです。2015/06/24