感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やっす
13
巻頭の黒岩涙香『無惨』『血の文字』は内容以前に、とにかく読み辛くて苦労した。この巻は戦前本格派の雄と言われる甲賀三郎目当てだったが、『琥珀のパイプ』『青い服の男』などの作品に本格の香りが確かに感じられて良かった。『支倉事件』については、確かに力作かもしれないけど、どうせなら甲賀の持ちキャラ獅子内俊次ものの長編を収録して欲しかったなぁ。そして予想外に楽しめたのが小酒井不木の『痴人の復讐』『恋愛曲線』『愚人の毒』。いずれも最後にアッと言わせる切れの良い落ちが用意されているのが見事でした。2017/03/07
ぽち
12
明治二十二年に発表された日本探偵小説の嚆矢、黒岩涙香「無残」(文語体、原文は旧字旧カナ、ここでは新字新カナ)本書750ページあまりのうち450ページ近くを占める甲賀三郎の犯罪小説(実話に基づく)「支倉事件」。この全集は2巻の乱歩と4巻の夢野久作だけもっていたのだけど、なんとその二冊以外の十冊がセットでヤフオクに出品されてたのでゲトした!2020/10/13
不見木 叫
12
小酒井不木「恋愛曲線」・甲賀三郎「蜘蛛」が私的ベストです。2017/03/07
法水
6
乱歩以前に活躍せし三名の探偵小説家の作品を収録。是また20年以上の積ん読本なり。黒岩涙香氏は明治、小酒井不木氏は大正から昭和初期、甲賀三郎氏は昭和初期の作品が収められしが、何れも是も今読んでも充分に面白し。正力松太郎氏がモデルとなりし警察署長が登場せし甲賀氏の『支倉事件』が白眉たり。2017/11/13
午後
4
ミステリー小説は読んでこなかったので、収録作はすべて初めて読んだが、小酒井不木がずば抜けて好きだった。医学者・推理作家・犯罪研究家である小酒井不木(1890-1926年)は、医学的な知識を盛り込んだマッドな奇想と緻密な細部描写、怜悧な文体の底に渦巻く徹底的な執念や異常心理を扱った作風を得意としていたようである。「恋愛曲線」における晋三の描写など、実験対象を観察するような突き放した文体の合間に織り込まれる叙情的な文章がたまらない。2021/11/17