内容説明
一九七六年五月。八月の民主党全国大会で副大統領候補に推されるはずの上院議員が、行方不明のわが娘を捜し出してほしいと言ってきた。期限は大会まで。ニールにとっての、長く切ない夏が始まった…。プロの探偵に稼業のイロハをたたき込まれた元ストリート・キッドが、ナイーブな心を減らず口の陰に隠して、胸のすく活躍を展開する。個性きらめく新鮮な探偵物語、ここに開幕。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
372
ドン・ウィンズロウのデビュー作にして、若きフィリップ・マーロウともいうべきニール・ケアリーの鮮烈な初登場。このニール、喧嘩には滅法弱いが心はタフ・ガイ。しかもほんとうの意味での優しさを持ち、恋は成就ではなく、あくまでも忍ぶ恋に徹する心意気。父親役の探偵ジョーとの感情の交歓もいい感じだ。この分量でありながら、けっして飽きさせることのないプロット展開。コリンとの追跡レースなどスリルと緊張の持続も見事。さらには、ややマイナーな作家、スモレットの初版本などというマニアックな興味を与えてもくれる。実に面白い。2024/04/27
遥かなる想い
125
行方不明の 副大統領候補の娘を 捜すために、プロの探偵に稼業をたたきこまれた青年が活躍するという若々しい探偵小説。ともすれば、退屈になりがちな ストーリー展開に恋愛的要素をちりばめることによって、読者を引っ張っていく。ただ、私には探偵修行の過程の方が新鮮で面白かったのは事実・・・ (1995年このミス海外第2位)2004/01/01
Tetchy
121
探偵物語としても上質でありながら主人公ニールの成長物語として実に爽やかな読後感を残す。次期大統領候補の娘の捜索というメインのストーリーの合間に断片的に挟まれるグレアムがニールを教育し、一人前の探偵に育てていく探偵指南の挿話が実に面白い。内容は社会の暗い世相を反映し、多様化する現代の病とも云える売春や近親相姦、麻薬密売に中国マフィアの台頭と気の滅入るような内容がふんだんに盛り込まれているのだが、ニールとジョーの師弟関係の挿話や“生きた”言葉を話す登場人物たちの会話のためもあって実に爽やかな読後感をもたらす。2010/05/30
ゆいまある
112
「犬の力」シリーズのウィンズロウデビュー作。訳が東江一紀さんということで読むしかない。ストリートのスリだった少年ニールがその才能を認められ、組織に探偵として育てられる。独りぼっちだったニールに実の父のような愛情を持って育て上げてくれたグレアム。ちょっと登場人物が多過ぎるのと人間関係が複雑すぎるのと話が長いのでぼーっとしてると訳が分からなくなって読み返す羽目になる。ラストまで話が読めないハラハラ感も流石。あー、このキャラ造形ほんと好き。続編に続きます。2020/07/29
buchipanda3
110
初ウィンズロウ。ニールがいい。彼は持ち前のセンスと頭の良さからNYのストリートキッドから腕利きの探偵に転身。彼の気取らない軽妙なセリフとどんな状況でも気骨のあるところを見せる姿に惹き付けられた。グレアムには子供のように気を許す姿も微笑ましい。彼はまだ若く、家族や過去の事で心の傷を残しており繊細な面も見せる。そんな彼が大人の事情でしかない依頼にどう向き合うか、アリーとの結末は、と最後まで気を離さず読ませてくれた。キーブルの逃走劇は吹いた。そして渋さより未成熟な苦みを感じさせるハードボイルドを堪能した。2020/07/12
-
- 和書
- 夜会服 角川文庫