出版社内容情報
山羊の頭がつけられた異様な死体。旧東独出身の老刑事がさまざまな葛藤を抱えつつ、二転三転する事件に挑む。ドイツを代表する実力派ミステリ作家が突きつける驚愕の真相とは。
内容説明
２００３年１２月、ベルリンで女性の凍った胴体が発見される。遺体の頭部は山羊の頭につけかえられていた。ツォランガー警視正が捜査に乗りだすが、まもなく、今度はナイトクラブで異様な羊の死骸が見つかる。そして彼の前に兄の死の真相を調べている女性が現われ…。複雑に絡み合う登場人物たちの思惑と、二転三転する事件。ドイツの実力派ミステリ作家が突きつける驚愕の結末！
著者等紹介
フライシュハウアー，ヴォルフラム［フライシュハウアー，ヴォルフラム］ ［Ｆｌｅｉｓｃｈｈａｕｅｒ，Ｗｏｌｆｒａｍ］
１９６１年ドイツ南部生まれ。１９９６年にデビューし、２０００年、２作目に発表した歴史ミステリでドイツミステリ大賞第３位に輝く。綿密な取材に基づいて執筆するドイツを代表する実力派ミステリ作家
北川和代［キタガワカズヨ］
ドイツ文学翻訳家（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
bapaksejahtera
12
東西ドイツ統一後を描く力作。長く封鎖された大都市ベルリンは真っ当な経済を維持できなかった。特殊な都市の統一後の混乱。ベルリンは膨大な財政赤字を抱え、これに乗じた悪徳政治家と金融家が結託して不動産転がしであぶく銭を得、市も表面的に一息つく。しかしようやく破綻の時が。共産中国の今日を連想する。この事態をボスニアから流入の若者がITを通じて掴み、これを危うんだ悪漢の手で殺され自殺として処理される。これに抗するその妹。損壊を伴う死体遺棄事件が続いて発生する。東独秘密警察の過去。終幕禁じ手の逆転トリックもまあ許せる2023/12/27
けいちゃっぷ
9
ベルリンで女性の凍った胴体（トルソ：原題）が見つかった。 東独（消滅した国）出身のツォランガー警視正が捜査にあたるが・・・。 同じころ兄の自殺に疑念を持つ女性エーリンがツォランガーを訪ねてくる…。 ベルリンの壁が崩壊したときは皆がバラ色の未来を夢見たものだが、今なお東西格差は大きいのだろうか。 そして話中で語られる金融スキャンダルはなんだったのか。 一読では消化しきれなかったな。 ５２２ページ 2015/06/17
かもめ通信
8
全編にわたって貫かれるトーンは、決して明るいものではないが、登場人物１人１人が丁寧に掘り下げられて描写されることにより、複雑に絡み合う各々の思惑が、ミステリの枠にとどまらない重厚な読み応えを提供してくれる。 うたい文句にあるような驚愕の結末！だとは思わなかったが、ある意味、当然の帰結として、納得のいくラストでもある。 おそらくは、読み手を選ぶ作品だとは思うが、少なくても私には期待通りの一作だった。 2013/07/29
tsubomi
6
2015.10.19-11.05:原題は「TORSO」。「体幹」、「不完全な作品」という意味があり、本書に登場する異常死体を暗示しているのでしょう。邦題はむしろ、主人公が旧東ドイツ出身であることを強調しているようで、東ドイツ出身者が抱く郷愁や不安や苛立ちを行間に感じました。猟奇殺人かと思いきや、基本的には経済界と法曹界を巻き込んだ巨大犯罪の趣で、兄の死の真相を知りたいエーリンと主人公の絡み具合は面白かったです。事件に深い関わりがあり、本書にも掲載されている壁画が気になるのでシエナに行ってみたくなりました。2015/11/05
飛鳥栄司@がんサバイバー
6
現代の肥満化したエコノミックな社会に潜む汚職を題材にドイツの社会派ミステリ。 トルソとラテン語の格言と寓話画を用いたショッキングな描写にメッセージをこめることで、読者の気を引くことには成功していると思う。 事件の真相が明らかになるにつれて、犯人のメッセージが著者のそれとシンクロしていき、東西ドイツ統一後の経済を中心とした資本主義社会にマッチしなかった登場人物の悲哀を感じされられる。 ミステリ的な反則を犯してでも社会派小説にしたかったのか、社会派小説を元にミステリを書いたら反則になってしまったのかは疑問。2013/08/24
