内容説明
探偵事務所を営むわしの前に、昔刑務所送りにした男の女房が現れた。出所してきた亭主の無実を晴らしてほしいと言うんじゃが、自分が解決した事件の再調査を何でひきうけにゃならんのか。けれどその夜一人の女が殺され、わしは過去の縁に眼をむけざるをえなくなった…。死の影に雄々しく立ちむかう心優しき老探偵の姿を活写する、面白うて、やがて哀しき私立探偵小説の逸品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けいちゃっぷ
4
軽すぎるせいか、主人公の探偵64歳が「わしが・・・なのじゃ」という台詞に違和感があるせいか、アメリカの悲劇的な物語にしては、緊張感のかけらもない。341ページ2010/03/04
えろこ
2
なるほど、これが「ハードボイルド」というやつか。渋くて格好いいです。主人公は64歳の探偵です。決して完全無欠という訳ではないけれども、負かされても淡々としていて、しぶといです。裏腹に語り口はウィットで、ちょっとした節回しにくすっとしてしまいます。テンポよく進む捜査劇の末の、痛いほど悲しい結末を受け入れる、その様の切ないこと。若さも外見も関係なく、敬虔に年を重ねることができれば、老いても老いたなりの魅力が出るようになるのかなと、なんとなく不純にも感じられる希望が湧いてきました。2015/04/02
負け猫
1
悪くない。けど、老探偵なら、スカダーシリーズのが人の悲しみをより伝えてくれる気がする。事件と平行して書かれてる恋人の体の不調が、解決すべく事件で頭を悩ませる探偵も私生活では愛する人がいて、二人で乗り越えなければいけない悲しみや辛さもあり、人間なんだなぁと。ただ、個人的に訳がちょっと残念。口調がおじいさんすぎる。2013/07/24
isuzu
1
原書で読んだらまたイメージが変わりそう。2007/05/12
えろこ
0
一人称は「わし」でも、恐らくテストステロンは超高め。64歳にして立派にミステリーの探偵役をこなして、恋人ともセックスができるのですから。「酸いも甘いも噛分ける」とは言いますが、年をとっても辛いことは辛いし、悲しいことは悲しいのでしょう。若者だったら、もっと感情をさらけ出して、泣いたり苦しんだりするのでしょうが、老ウォルシュは淡々としていて、しぶといです。しかし、それは心が鈍感になったわけではなく、大声にはならない心からの怒りだったり、押し殺した感情から滲み出る涙だったり…その耐え忍ぶ姿にぐっときます。2024/10/13