出版社内容情報
クリスマスシーズンで賑わうホテルの地下で、一人の男が殺された。ホテルの元ドアマンだった男は、サンタクロースの扮装でめった刺しにされていた。捜査官エーレンデュルは捜査を進めるうちに、被害者の驚愕の過去を知る。一人の男の栄光、悲劇、転落……そして死。自らも癒やすことのできない傷をかかえたエーレンデュルが到達した悲しい真実。全世界でシリーズ累計1000万部突破。翻訳ミステリー大賞・読者賞をダブル受賞の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
104
クリスマスシーズンで賑わうホテルの地下室で、元ドアマンの男がサンタクロースの扮装で殺される。こんなミステリーをクリスマスに合わせて選び、浮かれて読みはじめた。すぐ間違いに気づく。殺された男のサンタ姿のズボンは下ろされ、露出した性器にはコンドームが被さっている。バイオレンスものかと思えば、明らかになる登場人物の過去は、切なく重いものばかり。子ども時代に子どもでいられなかった哀しみ。踏みにじられた怒り。この子らも間違いなく神の子なれば、誰かが救うべきだった。And so this is Xmas.祈りを捧ぐ。2018/12/29
はたっぴ
90
お気に入りの北欧ミステリー第三作。今回も行き着く先がどうなるのかわからず、ハラハラドキドキしながら楽しめた。これまで以上に捜査官エーレンデュルの家族の問題があぶり出され、彼の幼い頃の切ない記憶も呼び起こされる。同時に同僚達のプライベートが明らかにされ、捜査官達の際立つ個性が垣間見えるようになった。本筋とは別に語られるサブストーリーが、物語に彩りを添え読者を惹きつけている。もちろん、本筋の事件は今回も奇妙なことこの上なく不気味である。アイスランド特有の風土や慣習による数々の事件に驚かされっぱなしだ。2018/06/03
yukaring
71
シリーズ3冊目。クリスマスシーズンで賑わうホテルの地下室で元ドアマンの死体が見つかる。死体はサンタクロースの扮装で滅多刺しにされていた・・。すっかりお馴染みとなったエーレンデュル、シグルデュル=オーリ、エリンボルクの警察の面々が各々のクリスマスの在り方についてなど遠慮のない意見を戦わせながら、事件解決に向けて一歩一歩調べを進めていく様が面白い。そして明らかになる1人の男の栄光と転落、彼を廻る人々の嘘や本音と悲しい真実。エーレンデュルの子供時代も明らかになる、静かだが心に深く余韻を残すストーリーだった。2023/06/06
HANA
58
シリーズ三作目。ホテルのドアマンがサンタクロースの格好で刺殺される。エーレンデュルは男の過去に迫る。ホテルの殺人と被害者の過去を探るという事件性から、有栖川有栖『鍵のかかった男』を連想しつつ読む。もっとも登場人物等はこちらが遥かに散文的。男の悲劇的な過去が薄皮を一枚一枚剥いでいくように明らかになると同時に、エーレンデュル自身の過去と娘との関係の変化も進行し、まさに頁を捲る手が止まらない。前二冊とあるテーマは共通しているものの、今回はそれが随分と歪。結局誰しもそれに縛られて逃げることが出来ないのであるな。2018/04/16
reo
55
ボーイソプラノといえばウイーン少年合唱団だが、彼らボーイソプラノは変声期でおっさん声になったらそれでおしまい。ウイーン少年合唱団は14歳になれば強制退団となる。この物語はかっては”天使の声”の持ち主だった少年が12歳のときの公演で突然声変わりが起きる。それから36年後アイスランドのあるホテルの地下室でサンタクロースの衣装を着た男が、何者かに刺殺される事件が発生する。その男こそ、かって一世を風靡した”天使の声”の持ち主だったグロドイグルその人。栄光から転落…。じりじりと真相に迫る手法は一気読み必死。是非!2021/02/02