内容説明
『スペイン階段』のリヴァイヴァル上映を観た帰り道、サリーは一台の車があとをつけてくるのに気がついた。いったんは無事やりすごせたかに思えたが、折りからの嵐に巨木が倒れ、行く手をふさいでしまう。あせった彼女は、倒木のむこう側でおなじ憂き目にあっていた未知の男性と車を交換、それぞれの目的地をめざすが…。英国の重鎮が華麗に描く、巧緻にして型破りの本格傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
166
★☆☆☆☆ ブランド晩年のミステリ。 お得意のユーモアミステリで、最後は二転三転…というパターンなんだけど、ヒロインのサリーをはじめ殆どの登場人物の性格が受け付けられなかった。特にサリーが疑心暗鬼になって、妄想を吐き出す場面は読んでて辛かった。 イギリス流のナンセンスジョークが合わなかったのかもしれないが、ブランドの他の作品は楽しめたので不思議。 また、肝心の真相も正直言って「普通」である。二転三転した上で、敢えて驚きの少ない結末に着地した感じ。2020/04/29
セウテス
61
「ハイヒールの死」以来久々、チャールズワース警部が警視正となっての単独の登場です。本作はブランド氏らしく、「犯人と被害者はこの9人の中にいる。共犯はいない」という紹介から始まる。物語も元映画女優のヒロインが、嵐の夜映画館を出た後何者かに浸けられる。倒れた大木に道を塞がれた為に、反対で立ち往生していた紳士と車を交換して逃げ帰るのだが、その車から死体が発見されるのだ。「さぁ、謎を解いてご覧なさい」と、作者に戦いを挑まれている様です。考え抜かれた設定ですが、ヒロインたちが好きになれない。確かに巧いと思いますが。2017/07/03
yumiDON
41
羊達が死に絶え、それでも言い訳を続ける狼少年、嘘つきではないがそんな主人公サリー。彼女の中では全てが自分基準、真実は歪められ、読者は混乱する。嵐をぬって、家に向かうサリーを追いかける謎の影、実在しない車を交換した男性、果たしてそれは真か虚言か。とにかく信用の出来ない語り手に、謎を解こうと身構えていると、調子を狂わされる。それにしても、彼女と友人達に一切感情移入出来なかった。はっきり言って、理解不能な生き物だ。そんなわけで、ラストも無感動に終わってしまった。2017/04/11
藤月はな(灯れ松明の火)
30
元女優のサリーが酷すぎる・・・・。特に酷いのは同性愛者のルフィに「あなたには家庭を持つことの意味を理解できないと思うけど」という場面は本当に厚顔無恥で呆れる。「八人の親友たちはよく、こんな自分しか愛していない妄想のヒロイン気取りの馬鹿女に魅力を感じて付き合って来れたな」と感心せずにいられません。心身ともにチャーミングなソフィがサリーに啖呵を切った時はスッキリしました。しかし、ジンジャー巡査部長がサリーに恋に落ちて目が眩んでいるのに偉そうなチャールズワース警視に「ぎゃふん!」と言わせられなかったのは残念かな2014/04/12
タカギ
28
自分がミステリを読む中でイラッとしてしまうことがあって、それは登場人物が嘘をつくことなんですよね。それを見破られると「ソーリー、ちょっと嘘をつきました」とか言いながら、更に嘘をついたりする。際限がない。それを見破るのが楽しい、という読者もいるかもだけど、見破れない私は苛々だけが募る。そういう話でしたこの本。最後にいくつもの伏線が回収され、あらゆることに理由があったことはスゴいとは思う。期待を上回りはしなかったけど、他の著作も読みたい。2020/08/29
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- 和書
- 司法界縦横無尽