内容説明
エンジェル家は、まるで牢獄のような陰気な外観をもつ家だった。しかも内部は対角線を引いたように二分され、年老いた双子の兄弟が、それぞれの家族を率いて暮らしていた。彼らを支配しているのは長生きしたほうに全財産を相続させるという、いまはなき父の遺言だった。そして、死期の近いことを感じた双子の兄が、遺言の中身を変更することを弟に迫ったときから、すべての悲劇ははじまる。愛憎うず巻く二つの家族の間に起こる連続殺人事件を、たくみなストーリー展開と、もりあがるサスペンスによって描いた密室ものの古典的名作、完訳決定版!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
64
〔再読〕遺言には、双子の兄弟の内長く生きた方に、全ての財産を譲るとなっていた。双子の兄が、もう長くはないと分かった時から、二人の子供たち家族を巻き込んだ殺人事件が発生する。エレベーターを使ったトリックは、本作が最初ではないかと思う。遺産や館の形などミステリの設定としては、たいへん考えられていて独特だ。犯人当てとしても、きちんと理屈が通っているのに簡単には解らない、推理のやり甲斐ある見事な謎である。残念なのは、探偵役ケイン警視に魅力を感じ無い事だ。犯人が館に潜んでいるのではという、サスペンスも欲しい処だ。2018/03/05
hit4papa
43
江戸川乱歩が激賞し「三角館の恐怖」の元ネタになったという本格推理小説。昭和7年もののヴィンテージですが、それほど古さは感じません。命を長らえたものに遺産が相続されるという遺言に翻弄される双子とその子供たち。双子の兄の死が目前になったことから殺人事件が発生します。兄弟の仲違いを表象するような不可思議な形状の館。ドロドロの人間関係の中発生する連続殺人といういかにもな作品です。トリックとしては新鮮さはありませんが、犯人当てとして楽しむことはできます。ただ、探偵役が事件をややこしくしてるように見えるんですがね。2017/10/04
kagetrasama-aoi(葵・橘)
39
江戸川乱歩氏が激賞した作品。陰湿な遺言状、凝った造りの館(見取り図有り!)、そこここで仄かされる愛憎、殺人事件…と将に私の好みのストーリィ。随分以前に読んだので、犯人すっかり忘れていて、楽しめました。1932年に上梓されたもの、今読むとトリックは進化していますが、動機は変わらないですよね、人間が殺人に至るまでの激しい感情は進化(?)してないのかも。乱歩氏のものも読み返したくなりました。2021/04/23
yucchi
36
『密室大図鑑』より。エンジェル家の財産を巡る連続殺人事件。3階でエレベーターに乗り込んだ車椅子に乗った老人が、1階に降りて来た時には殺害されていた。探偵役のケインが小物感満載でなんか姑息な感じなので、あまりワクワクは出来なかったのが残念。所々にある見取り図はやはりワクワクするけど、あんまりトリックに関係なかったような気が(笑) 見取り図好きへのサービスということで(^^)2017/04/23
たかなし
22
陰湿なエンジェル家での殺人。第二のトリックは正直私がそこまで好きじゃない××のトリックだったので思ってたのと違ったんです。第一のトリックは読み終わってからなんで気づかないんだよ私のバカ!ってなりました。あんなに単純なトリックなのに…と悔しい次第です(笑)あの隠し方上手いですね。で、このエンジェル家の殺人はこのトリック犯人よりも個人的には舞台設定が大好き。おどろおどろしい一家が大好きなんです。登場人物たちもみんな好き。執事好きです(笑)総合としてはトリック犯人も面白いし舞台設定も登場人物も面白い。満足です。2018/11/09
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