出版社内容情報
ルース・レンデル[ルースレンデル]
著・文・その他
高田恵子[タカダケイコ]
翻訳
内容説明
アンという女が殺された。犯人はジェフ・スミスだ―そんな匿名の手紙がキングズマーカム署に届いた。ウェクスフォード警部は調査を開始したが、死体さえ発見されない状況に困惑せざるを得ない。本当に殺人はあったのか?混迷する捜査陣の前に、やがて事件は意外な真相を明らかにする!巧みなプロットを駆使した、レンデル初期の傑作長編!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
63
ウェクスフォード警部シリーズ第3弾。警察に届いた手紙には「アンという女性が、殺された」と書かれていた。しかし女性の死体が出てこない。手紙を書いた人物は誰なのか。幾つもの謎が次々と浮かび、物語の進行が滞る事はない。ハッキリ言うと、本シリーズはプロットの巧さで読ませる。警部の人柄や時の流れは勿論、全ての登場人物がしっかりとした人物像の基に、描かれているのが素晴らしい。強烈な謎から結末まで予想を裏切る展開は、正に作り込まれた作品だと感じる。「意外な~」の部類のミステリであり、どっしりとした読み応えが在ると思う。2017/02/20
hit4papa
41
ウェクスフォード警部シリーズ第三弾。姉が帰宅しないという警察への日常の相談事から、それを小耳にはさんだ警部が事件の匂いを嗅ぎつけるという、まさに炯眼が冴えるわたる一冊です。登場人物の心の襞にわけ入っていくのがレンデルの得意技。読み進めるうちに複雑過ぎる感情のもつれに酩酊してしまいます。事件は、警察内の身内をも巻き込んで思わぬ方向へむかうわけですが、読了後、冒頭に戻るとまた楽しめる趣向になっています。性格難ありのウェクスフォード警部は、正義感(観)だけは申し分ありません。邦題だけが気に入りませんでした。2017/09/14
himehikage
18
ウェクスフォード警部シリーズの1967年作品。地味な作品だけど、あとがきにある「錯綜した人間関係や感情を、ありふれた日常生活を舞台に描く」のに秀でた作家レンデルというのはこの作品でもそのとおりで、読後になんともやり切れなさが残るのはさすが。2019/12/21
拓也 ◆mOrYeBoQbw
17
ミステリー長編。ウェクスフォード・シリーズ第三作。こちらは『ロウフィールズ館の惨劇』とは一風変わった刑事ミステリー・シリーズになります。エンタメ色が強いですが事件の精密さと人物描写の上手さは光り、群像劇のような刑事たちの捜査や、散りばめられた手掛かりが終盤に線で繋がれていく、王道の推理小説と言えますね。ミステリー慣れした方には犯人と事件の予想がついて、逆に展開の遅さが気になるかもしれませんがw、そこも含めて予想外の捜査の流れを楽しむ作品だと思いますー2016/06/20
bapaksejahtera
12
ウェクスフォード警部シリーズの2作目。次作で若い部下にすげなく当たる主人公が描かれたが、本作でその原因を知る。主人公が娘の友達仲間への紹介を仄めかす程好意を持った若い部下が、本作唯一の殺人事件に大きく関わった女性と恋仲になる。よって泣いて馬謖を切ったという事だ。若い画家が妹が失踪したと飛び込んでくる冒頭。以下読者はこの生活能力のない天才や、節操のない雑貨屋の娘に振り回され、結果は肩透かし。但し風景や人間描写は丁寧で、話の骨格は良いが、何となく締まりが無い作品。その上に邦題のインチキさ。原題こそ内容を表す。2024/11/25