内容説明
男は人を殺してみたくてしようがなかった。金なら腐るほどあるし、容姿は映画スターなみ。地位や名声にも恵まれている。それでも男は歪んだ欲望に衝き動かされ、一人の悪徳刑事を抱きこんである殺人計画を実行に移そうとしていた。そんな彼らに、いま一人の刑事が疑惑の目を向けたとき…。ひねりの効いたウィット、そして絶妙な人間描写。まさにレナードの真骨頂を示す名品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
110
訳者は、多作のエルモア•レナード作品の中でハズれがない中の一作だと語っているが…。なぜかは、わかる気がする。男目線で女を見なきゃこれは楽しめない。アンジェラに魅了を感じなきゃブライアンの気持ちについていけないもの。さらに、ロビーの動機もつかみにくい。『オンブレ』と並べちゃいけない気がする。でも、やっぱりクオリティは高いです。2020/04/14
harass
54
数十年振りの再読。裕福でハンサムな実業家は人を殺したくてしょうがなかった。彼はガンマニアで、元悪徳刑事を雇いある計画を企てるのだが、辣腕刑事が彼らに目をつける…… 作者得意のクライムもの。デトロイトを舞台に小気味良い会話と先が読めない展開を繰り広げる。耳が良い、現実の会話を表現するのに長けているとされる作家だが、そこまでとは思えない。面白いのは確かなのだが、翻訳の宿命かと。円熟期の作品で個人的にこの作家の傑作の一冊。読みなおそうと本棚を見るが処分したのを忘れていた。買い直したが恐らく自分が売った本だろう。2016/11/02
タツ フカガワ
41
ダニエルズは映画スターのような容貌の富豪。が、なに不自由ないこの男には、銃で人を殺したいという抑えきれない欲望があった。彼に手を貸す元刑事クーザと、彼に疑惑の目を向ける刑事ハード。女性ルポライター、ノーランとハードとの恋を絡めながら進むクライム・サスペンスは1981年の作品。日本車のアメリカ侵攻という時代を背景に、軽妙な語り口で銃社会の危うさを描いていく。とくに展開が一変する終盤70ページは一気読み。昔E・レナードにハマっていたことを思い出した一冊でした。2023/06/09
Tetchy
5
う~ん、まさかあの登場人物が亡くなるとはなぁ・・・。でもそれを補う爽快感は得られた。2008/12/19
towerofthesun
2
銃器マニアの富豪が歪んだ正義を振りかざして殺人を犯す…いまとなってはありがちなプロットだが、81年当時は斬新だったのか。それよりも主人公のブライアンとヒロインのアンジェラがする惹かれ合う場面がどうもご都合主義に思えたが、これは富豪ロビーと悪徳警官ウォルターが意気投合したりしなかったりするのと、あえて対照的に描いていたのかな。そういう意味でも「スプリット・イメージ(分裂した像)」の話だった。2020/08/23