内容説明
大不況時代のオハイオ川流域。父を亡くした幼い兄妹の前に現れた伝道師は、右手に「愛」、左手に「憎悪」の刺青をしていた。彼に心を許していく母と妹パール。そしてジョンの悪夢が始まる。伝道師は狩人。獲物を手に入れるためには手段を選ばない。そのゆがんだ意志に子供たちは追いつめられて…。映画化され、スティーヴン・キングに多大な影響を与えた幻の傑作サスペンス。
著者等紹介
宮脇裕子[ミヤワキユウコ]
東京生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業。英米文学翻訳家
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感想・レビュー
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アナーキー靴下
80
映画版はロバート・ミッチャム扮する、指元にLOVE&HATEの刺青をした伝道師、という強烈なキャラクターしか印象にないが、とにかく好きだったので、原作小説の存在を知り読んでみた。あらすじは隠し金を執拗に狙う伝道師と、追い詰められる幼い兄妹、というサスペンスだが、起きた事実以上の恐怖を感じさせる巧みな心理描写が魅力。伝道師は周囲を騙し、少年を孤立させるが、少年は屈しない。墓の下に人間がいるわけがない、みんなでぐるになって悪い夢を作っている、と、現実と空想のせめぎあいの中必死に戦う。エピローグには思わず涙が。2021/10/05
hit4papa
47
右手にLOVE、左手にHATEの刺青がある偽伝道師ハリー・パウェルが、幼い二人の子供を執拗に追いかけ回すというサスペンスです。大人は信じてくれない系で、ホラーも斯くやとばかりのハラハラ感があります。本作品がスティーヴン・キングに影響を与えたというのも納得です。強盗殺人犯で死刑に処せられた父、悪党によろめいて支配されてしまった母。子供にとってはなんとも悲惨は物語です。本作品の面白さは、ハリーの見た目を含めた個性と悪辣ぶりにつきますね。映画版では、ハリー役のロバート・ミッチャムの怪演(?)が話題です。2019/08/31
空猫
40
'52年、大恐慌の時代を背景にした作品。強盗殺人で処刑された父が隠したのは一万ドルだった。それを狙って伝道師が母に取り入り、横取りしようと親子に近づき…。伝道師の裏の顔に一人気づく息子だが他はみんな彼を信用してしまう、その恐怖は、キングに影響を与えたサスペンスだそう。でも犯人の異常な執拗さよりも、子供たちを守った老婦人レイチェルを始め子供たちへの無償の愛情や信仰心の方が前面に出ていたように思う。映画もあるそうなので観てみようかな。2022/03/26
ペグ
16
子供達が狙われる小説として、例えばC.j.ボックスの(ブルー ヘブン)があるけど。こちらも面白かったがスリルとサスペンスでは(狩人の夜)はそれをはるかに上回るのでは。何せ相手は…ブルーヘブンのジェスがこちらではレイチェル。大した女性!かっこいいです‼️最近読んだサスペンスでは最高でした。2015/10/02
bapaksejahtera
11
大恐慌直後30年代初のオハイオ川流域。流れ者の説教師となり言葉巧みに未亡人をたらし込んでは殺害し大金を奪って殺す事を繰返す詐欺師が微罪で監獄に放り込まれる。同室の男は狂気に駆られ子供の為と殺人を犯し大金を奪ったが金の在り処を自供しない。説教師は男からその隠し場所を聞き出そうとするが男は口を閉ざす。獄から出た説教師は男の妻と子兄妹を見つけ出し、近所の人々を味方につけ家に入り込む所から恐怖の筋書きスタート。キリスト教の愚昧世界が恐怖を加速するが、最後は偉大なる母性に包容されるクリスマスで幸せに幕を閉じる佳作。2021/10/23