内容説明
殺人の疑いのある死に際会した場合、検視審問を要求するべきか否か。とある料理屋でピーター卿とパーカー警部が話し合っていると、突然医者だという男が口をはさんできた。彼は以前、診ていた癌患者が思わぬ早さで死亡したおり検視解剖を要求したが、徹底的に分析にもかかわらず殺人の痕跡はついに発見されなかったのだという。奸智に長けた殺人者を貴族探偵が追つめる第三長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
238
★★★☆☆ ウィムジィ卿シリーズ第3作目。 今作の犯人は、序盤の段階で分かってしまうため、ハウダニットがメインとなる。 しかし肝心の殺害方法も現在のミステリファンなら当然思い浮かぶものであり、全く驚きは無かった。 とはいえ、キャラの個性と軽妙な会話のおかげで十分楽しく読めるので、個人的には満足できた。 犯人の極悪さが1番の注目ポイントかもしれない。2021/12/03
夜間飛行
215
医者の診立てと違い老婦人が急に亡くなる。解剖したが異状は見つからず、医者は非難を浴びる。そこでウィムジイ卿が謎を探り始める。この貴族探偵には優秀な聞き込み役がいて、中年女性の観察力を武器に潜入調査を進める。遺産を継いだ姪が怪しいが、事件性の有無さえハッキリしないうちに、今度は以前この家の家政婦だった娘が森の中で死体で発見される。これも死因に異状なし。もやもやしたまま犯人の見えざる手を想像させる書き方は好みが分かれそうだ。まあ、ウィムジイ卿とパーカー警部の系図探索や法律調べに気長につき合っても損はなかろう。2022/02/27
NAO
65
ピーター卿シリーズの三作目。どうしても他殺には見えないもののその死に疑問が残る老女の死と、調査開始後にまたも起きた不審死。誰がしたかということより、なぜ行われたかに重点が置かれた謎解きになっている作品。パーカー警部、調査員のクリプスン嬢、そして従僕バンター。ピーター卿を補佐する魅力的なメンバーと、ピーター卿の掛け合いが楽しく、いかにもイギリス的。本編には関係ない何でもない場面だけれど、ピーター卿が出かける際の服装についてバンターに意見を求め、バンターが実用的かつスタイリッシュにアドバイスする場面が好きだ。2016/09/23
セウテス
62
ピーター卿シリーズ第3弾。〔再読〕ある老婦人の死を調査する事になったピーター卿。担当医師ですら、明らかに出来なかった不審な死を明らかに出来るのか。トリックは現代ではよく知られる様になった古典的なものですが、この作品の頃は驚異的だったと思います。むしろ被害者は末期ガンであり、放っておけば自然と亡くなる病状であるのに、何故殺人のリスクを負う必要があるのか。誰が犯人かより何故に重点が置かれている作品。会話が楽しい、場面の情景が直ぐに浮かぶ、心に長く残る、詰まりはストーリー・テリングが抜群に良いという事なのだ。2015/09/20
ぽんすけ
37
証拠や論証を重ね、見えざる殺人を見える殺人へと明らかにしていく本作。確かに世に出てくる殺人って実際の発生件数のわずか数%な気がする。その裏にどれだけの完全犯罪が眠っているのか。今回のピーター卿は正にその眠れる殺人に挑んでいくんだけど、彼は終盤でこの罪を果たして暴いていいのか?と躓くんだよね。前もこの戸惑いがあったんだけどピーター卿にとって探偵は趣味であって職ではないわけで、捜査の過程で犯人側の理由も分かってしまい、世が平穏なら自分が罪を暴くことに意味はあるのかと苦悩する。そこで一歩立ち止るのが彼の魅力だ2024/10/25