内容説明
霊媒マイラが立てた計画は奇妙なものだった。子どもを誘拐し、自らの霊視で発見に導けば、評判が評判を呼び、彼女は一流と認められるはずだ。そして、夫ビルと共謀し実業家クレイトンの娘を誘拐。夫には身代金を要求させ、自分は娘を霊視したとクレイトンに伝える。すべては計画どおりに進んでいたが…。待ち受ける最終7ページの衝撃。ミステリ史上唯一無二、驚愕のサスペンス。
著者等紹介
北沢和彦[キタザワカズヒコ]
1951年東京生まれ。東北大学文学部卒。英米文学翻訳家
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感想・レビュー
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タカギ
20
桜庭一樹氏のエッセイで知った本のなかの1冊。心霊とミステリ、サスペンスを絡めた作品って、結構あるのね。霊媒のマイラと夫のジムは、営利誘拐を起こす。計画は上手くいくかに思われたが…。現代の日本警察ならこの間抜けな夫婦はすぐ逮捕されると思うけど、何しろ60年近く前の作品だから、それは言いっこなしで。ラストは思っていたほど驚かなかったけど、それもやっぱり現代の小説ほど親切ではなく、「驚かせてやるぞ!」というあざとさみたいなものが希薄なせいかもしれない。2017/08/08
藤月はな(灯れ松明の火)
17
誰しもが経験するであろう人生の皮肉を描いたサスペンス。自分が有名になることしか考えない子供嫌いの妻とそれに従う夫のお粗末な誘拐計画が成功したのに対して後はボロボロと破綻します。最後のオチはまさに怒涛であり、最大の皮肉としか言えないだろう。2012/01/05
冬見
15
霊能力の評判を上げるため、夫を唆し児童誘拐を企てた霊媒師マイラ。しかし事態は思わぬ方向へ展開し、悲劇が起こる。◆マイラが本物の霊媒師であるというのが本作最大の特徴だろう。マイラの行為はどこまでもエゴイスティックで、誘拐された子どもの悲惨さに胸が痛む。行動を起こすごとにミスを犯し心身ともに困憊してゆく夫と、どんなに事態が悪い方へ転がっても己の利益しか見えていないせいかやたらと前向きなマイラの姿が対照的で、そのちぐはぐ具合は愚かしく道化的ですらある。ラストシーンまで一貫したその性根に怖気立った。2019/06/28
pulp
10
何か月も拾い読みしている川出さんの『ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション』の瀬戸川猛資の項を読んでいて思い出して再読。これは私的には好きな邦題のオールタイム・ベスト3に入る(あくまでもタイトル、タイトルだけは、です。中身は別よ)。原題も”rainy”とかじゃなく”wet”てところがねえ、もう、どう転んでもイヤな事しか起こらないよコレって感じ。意外に夫婦の無計画ぶりにはユーモア、というか変なドタバタ感があったりもする。あと「最終7ページの衝撃!」と帯にはあるが、現在の読者は予測つくんじゃないかな?2024/11/24
秋良
8
杜撰すぎてどう考えても上手くいかない営利誘拐が、思った以上の酷さで上手くいかなかった(笑)。まあまあかな。2018/05/09