内容説明
ロンドンから汽車で一時間ほどの小村パストン・オートヴィル。そのゴルフ場で、四人の男性がプレイ中に推理小説談義に興じていた。ところが、スライスした打球の行方を追ううちに、鉄道の陸橋から落ちたと思しき顔のつぶれた男の死体を発見してしまう。四人は素人探偵へと変じ、この事件について独自の推理を競い合うのだが…。“ノックスの十戒”で知られる著者の古典的名作。
著者等紹介
宇野利泰[ウノトシヤス]
1909年東京に生まれる。1932年東大文学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kircheis
304
★★★☆☆ 単に古典ミステリとして名高いだけでなく、『毒入りチョコレート事件』以前の多重解決ミステリとして興味深いし、アンチミステリの極致というか、後期クイーン問題の先取りというか、とにかくすごい作品だと思う。 物語を単体として考察すると、真相の驚きやひねりはないし、哲学的な談話で終わるエンディングには肩透かしをくらったような気分になるかもしれない。しかし、それを踏まえた上で、ミステリ小説の本質はこういうものなのだということを強く読者に印象付ける本書は唯一無二の存在だとも思う。2022/07/30
セウテス
53
ミステリに置いて有名な「ノックスの十戒」を提唱した作家さんです。素人探偵の四人組が、ゴルフの最中に陸橋から転落したと思われる死体を発見します。彼らは独自の調査を行い、それぞれが推理を展開し合うというストーリーです。ノックスの十戒をきちんと理解した上で読むと、より一層の皮肉とユーモアを楽しめます。つまりこの作品の見処は、如何に真実の的を得ている様に見えた推理が、何故当たりではなかったのか、に在るのです。「最期に行き着く作品」と言われていますが、本格ミステリに対する訓戒として、最初に読むのも有りだと思います。2015/05/28
geshi
30
あのノックスの十戒を作った作者らしい、探偵小説の手法でもって探偵小説のいびつさを笑うユーモアミステリー。事件関係者の迷惑も顧みず、警察への反発もあらわに行われる素人探偵行為により発見される新たな事実。しかしそれらはことごとく道化であり、結局は自分の推理に振り回されて存在しない影を追うだけのもの。より意外な方が真実らしい、というミステリーのお約束を痛烈に皮肉る、本当にすれっからしのファン向け作品。名作と言うより古くからある伝統の珍味といった感じだ。2015/01/18
背番号10@せばてん。
27
1988年8月29日読了。作者はこの作品よりも、1928年に「ノックスの十戒(探偵小説十戒)」を提唱した人物として、ミステリ史に名を残した聖職者。ただし「ノックスの十戒」も「本書のあらすじ」も、忘却の彼方。(2025年2月13日入力)1988/08/29
ホームズ
22
2012年の復刊フェアで再読。読み返すたびに面白くなっていく気がする。最初に読んだ時はごちゃごちゃした感じで読みにくかったけど今回は面白かったな~(笑)いつもはノックスの作品は読みにくい感じがするんですが今回は読みやすく感じた(笑)調子が良かったのかな(笑)2013/03/13