出版社内容情報
アメリカ随一の女流本格作家マクロイによる、趣向と技巧を凝らす短篇集が文庫化。ミステリからサスペンス、破滅SFまでバリエーション豊かな8篇を収録する。
内容説明
輝く謎の飛行体を見た者が相次いで死亡する怪事件―精神科医ウィリングの推理を描いて本格の技巧を示した表題作ほか、荒涼たる世界の終末を美しい筆致で綴り深い感動を呼ぶSF「風のない場所」などの多彩な8篇に、十五年前の事件に決着をつけるため帰還した男が殺人事件に巻き込まれる中篇「人生はいつも残酷」を併録。アメリカ随一の実力派マクロイの魅力を凝縮した傑作選。
著者等紹介
マクロイ,ヘレン[マクロイ,ヘレン] [McCloy,Helen]
アメリカの作家。1904年ニューヨークに生まれる。23年、フランスに渡りソルボンヌ大学に入学。在学中から美術評論家や新聞記者として文筆活動を始め、以降十年近くヨーロッパに滞在した。帰国後38年に長編『死の舞踏』で作家デビュー。同書で探偵役の精神科医ベイジル・ウィリング博士を創造する。46年に作家ブレット・ハリデイと結婚(61年に離婚)。50年には女性初のアメリカ探偵作家クラブ(MWA)会長に就任。長年の功績を称えられ、90年にはMWAグランドマスター賞を受賞した。94年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
117
★★★★☆ 短編集。 ミステリ4つ(うちウィリング物が2つ)に、中編1つ、SF4つとかなり豪華。 しかもいずれもハズレ無しの安定感。特にSFの4つはいずれもインパクトが強くて印象に残る秀作だと思う。個人的にはコメディ的でありつつシニカルな『ところかわれば』がお気に入り。 『風のない場所』や『Q通り10番地』も当時の世相に警鐘を鳴らす名作だ。 2019/12/20
ずっきん
77
まず、初っ端の『シノワズリ』に鷲掴みにされた。なんだ、このエキゾチックな、幻想的な、しかも骨太い感じ。酔うわ。そこからのSF、風刺、本格に至るまで、幅の広さというか引き出しの多さに驚く。翻訳者が違っていても同じ匂いが漂うのは、マクロイのレベルの高さなんだろうか。手練れだなあ。『ところかわれば』『風のない場所』もすごくよかった。ちょと長編さがそう♪ 表題作は面白く読んだものの、謎解き場面は流し読み。この筆致と構成でそこが頭に入って来ないってことは、本格はもう無理かもしれぬ。ぐぬぬ。2021/01/20
yumiko
68
毎年楽しみにしている創元のマクロイ。今作は短編8編中編1編からなる傑作選。不可思議な事象を論理的に解決する姿がスマートなウィリング博士物の面白さは言わずもがな。後に長編化した「鏡もて見るごとく」は、幻想的味わいが損なわれることなく謎が解けるさまが素晴らしい。「ところかわれば」は女性ならではの皮肉がたっぷりと効いたSF。こんな作品も手がけていたのかと驚きと共に得した気分。「風のない場所」は絵本「風が吹くとき」を思い出した。社会的メッセージも多分に含んだ彼女の作品の中でも、読後に残すものは一際重く感じた。2016/01/26
sin
61
とかく最近のミステリーは奇を衒うことに長けているが、その反面どこかしら不安定な印象を受けてしまい心底楽しんで読書しているとは言い難いのが実情である。その点ミスマクロイの作品はその筆致が揺るぎないので安心して読み進めることができる。足元が揺るぎない感じで奇抜な発想の作品も疑うことなく作者の筆についていくことができるという感じだ。ここに収められた作品の発表年代を見ると何れも半世紀程前の作品であることから言い古された表現ではあるがいつまでも褪せないことに驚嘆の思いがする。2015/03/06
のっぱらー
45
マクロイ自選の短篇集に、新たに中編1編を追加した作品集。マクロイはミステリ作家だとの認識だったが、本作にはSF作品も含まれておりややびっくり。また、1作目の「東洋趣味(シノワズリ)」は、日本人の自分が読んでも難解な部分が多く、ある意味マクロイのアジアへの造詣の深さを感じさせる作品。個人的には火星人と地球人とのファーストコンタクトを独特の視点で描いた「ところかわれば」が新鮮でよかったかな。2015/05/02