出版社内容情報
平凡な女性教師の解雇に秘められた驚愕の事情とは? 精神科医ウィリング博士は、幻のように美しく不可解な謎が生んだ事件と対峙する。マクロイの最高傑作、新訳版で登場。
内容説明
ブレアトン女子学院に勤めて五週間の女性教師フォスティーナは、突然理由も告げられずに解雇される。彼女への仕打ちに憤慨した同僚ギゼラと、その恋人の精神科医ウィリング博士が調査して明らかになった“原因”は、想像を絶するものだった。博士は困惑しながらも謎の解明に挑むが、その矢先に学院で死者が出てしまう…。幻のように美しく不可解な謎をはらむ、著者の最高傑作。
著者等紹介
駒月雅子[コマツキマサコ]
1962年生まれ。慶應義塾大学文学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
287
★★★☆☆ ウィリングシリーズ第8作目。 本格と幻想が高い完成度でミックスされていると名高い本作だが、ウィリングの推理がやや強引で根拠に乏しい点、その犯罪計画ではフォスティーナが死なない確率も高かった点、動機がやや弱い点等から、本格推理としてはあまり評価できないように感じる。 反面、幻想ミステリとしては、ドッペルゲンガーという題材の不思議さ、ゴシックな雰囲気、真相に謎を残したままの結末など、なかなか完成度が高いと思う。 似た趣向だったカーの『火刑法廷』に比べると、ホラー度が低めに感じ、やや劣る印象。2022/04/27
セウテス
81
【ウィリング博士】シリーズ第8弾。女学院教師フォスティーナは、突然校長より解雇 を言い渡される。数人が同じ時刻異なった場所で、別々の彼女を目撃していたのだ。失意の彼女が、ニューヨークのホテルにたどり着いた丁度その頃、女学院では1人の女性教師がフォスティーナに殺害されるという事件が起こる。幻想と怪奇、ミステリの一角として心踊る設定であり、さすがマクロイ氏とても上品に感じる。謎解きはちょっとした事から解答に落つくのだが、殺人のトリックは不満である。私には中途半端な終わりと感じるのだが、余韻を残したとも言える。2022/04/17
星落秋風五丈原
55
ある意味「あなたは誰?」と同じテーマを扱っているミステリ。自分のドッペルゲンガーに悩まされた女性の死に陰謀の影を感じるウィリング博士。どさくさにまぎれてギゼラにプロポーズ!やるなぁ。恋人と別れるのをいやがったりして単なる捜査官ではない恋する男としてのウィリングが見られる貴重な作品。2015/10/17
藤月はな(灯れ松明の火)
50
女子寄宿学校を包む異様な空気、ドッペルゲンガー、思春期の少女たちの言動に惑わされながらその倦怠的で眩惑的な空気に無我夢中になって読み進めました。法廷では裁けない明かされた惨い真相に唯々、振り回されたフォスティーナが不憫だと思わずにはいられませんT-T2011/12/21
こばまり
49
面白かったです。65年前の作品なのでトリックに物足りなさを感じるミステリファンも居られるかもしれませんが、妬みや怖れ、好奇心等、人の心の移ろいは今も昔も変わりなく、かつ興味が尽きないものだと感嘆。マクロイは美術評論家でもあった由。女性、ファッション、調度品、香り、恋人同士で過ごすひととき等、様々な描写が繊細で美しいです。全体を包む幻想的な雰囲気にも魅了されました。2015/05/17