内容説明
被害者捜し、探偵捜し、と一作ごとに新機軸を出して読者を魅了した才媛パット・マガーの長編代表作。戦後「怖るべき娘達」のタイトルで紹介され、女史の名を一躍高めた記念すべき作品。友人からの手紙で故郷のおばが殺されたことを知った主人公が夫の協力を得て、過去の思い出の中から犯人と被害者を捜そうとする。安楽椅子探偵ものの傑作である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
316
★★★☆☆ 七人いるおばのうち配偶者を殺したのは誰なのかを、過去の記憶を元に推理する話。 いわゆる「変格物」で有名なマガーだが、本作は割と普通のミステリだと思う。 七人のおばのいずれも問題のある人物で、それぞれにまつわるエピソードを読んでいると苛々感が募る。 オチを聞くと「やっぱり!」という感じだが、どう見てもおば達全員イカれてるよ。この後、第二第三の殺人が起こっても全く不思議じゃない。2022/08/08
セウテス
91
〔再読〕イギリスに住む主人公夫婦の下に、「貴方の叔母が夫を毒殺し自殺した」事を思いやる手紙が友人から届く。しかし主人公にはアメリカに7人の叔母がおり、いったいどの叔母の話なのか分からない。という作者が得意とする被害者が誰か=どの叔母が殺人を犯したのかを推理する、Whodunin?ミステリです。推理をする為に、回想物語が語られる前作同様の設定ですが、ミステリを度外視しても一族の愛憎物語が最大の見どころです。その人間模様は正に恐るべき7人の叔母ですが、中にはさらっと伏線や手掛りがたいへん巧く存在する傑作です。2018/06/27
雪紫
79
友達の手紙でアメリカのおばが夫を殺して自殺したということを知ったサリー。既に知ってると思ってるのかその名前こそ書かれてなかったが、おばは7人もいて誰だかわからない・・・。夫ピーターは妻のためにおば達の過去から突き止めようとするのだが・・・。いやいやどの夫よりもドリスの方が殺されても奇妙しくないでしょ!な伏線を見落とし、謎解きがどうでも良くなるくらいのおば達の強烈ドロドロ面白(?)エピソードもりだくさん。確かにその部分気になってたけどあれ過ぎてピーターが指摘するまで頭飛んでました!主人公夫妻に、幸あれ。2023/04/30
星落秋風五丈原
75
それにしても「誰が殺してもおかしくない叔母」という設定が怖い。一番のガンは姉妹たちの長姉で全てを支配したがっているクララだ。自分が富豪との結婚という、ステータスも経済的安定もゲットした勝ち組で、かつ幼い頃から妹達を夫が娘のように育ててきたので、妹に対して支配的にふるまおうとする、というより、そう振る舞うのが自然なのだ。固定観念のもと妹達がそれぞれ問題を抱えるのも無理ないし、クララの夫はなだめ役になってくれたり、時折理性的な事を言ってくれるのだが、子供の頃から甘やかしていた弱みがあるので、厳しく叱れない。2019/03/31
藤月はな(灯れ松明の火)
60
友人(でも自分勝手)からおばが夫を殺害したことが露見したことを名前もない手紙から知ったサリー。ところがサリーには7人ものおばがいたのだ。まず、最初から「電話して確かめた方が早くない?」とツッコみしていました。『高慢と偏見』の母をさらに独善的にしたようなクララや不幸の種を振りまくテッシー、モンスターペアレンツなアグネスとか現在にも通じる大人の身勝手さにうんざり。もう、老害としか言えないような家長が子供や自分より立場が小さい人を家族から勘当するシステムの逆転が必要になってくる時代が来たのかもしれませんね。2014/05/13