内容説明
ニューヨーク地方刑事裁判所で、奇妙な裁判が進行していた。お抱え運転手が殺された事件を審理していたのだが、肝心の遺体は見つからず、殺害現場と見られる地下室に焼け焦げた義歯と脛骨、右中指の先のほか血痕など若干の痕跡を残すのみ。“罪体”のない殺人事件を巡って、検事側と弁護側の烈しいやりとりが展開される。“サスペンス小説の魔術師”が仕掛ける、愛と復讐の物語!?―。
著者等紹介
大久保康雄[オオクボヤスオ]
1905年生まれ。慶應大学卒業。1987年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
294
★★★☆☆ 法廷シーンと過去の出来事が交互に描かれ、徐々にどのようなことが起こったのかが明らかになる。 今読んでも良質なサスペンスだと思うが、流石に現代の読者にとっては結末は容易に予測可能なものだろう。 また、主人公のリュウが選んだ復讐方法は、不発になることも十分あり得る危ない方法で、あまり復讐の凄みは感じなかった。2022/07/25
ケイ
136
これは面白い。ミステリーに対して少々スレッカラシなわたし(読みすぎと思われ…)だが、これはもう前のめりになって読んだ。前書きの仄めかしから、裁判の進行につれて、誰が一体どうなったんだか、なんなのだか気になって気になって。最後の最後まで安心は出来ないし。楽しみました。おすすめ。2020/05/31
セウテス
94
ノンシリーズ第5作品目〔再読〕。奇術師リュウと妻となるタリーの恋愛と、殺人事件の法廷が描かれるカット・バック手法。更には、2つの物語が交差し合う謎解きの終盤は、袋綴じという楽しい作りだ。しかし今回私は結末を知っている身で読んでいる訳だが、本作の良さは意外性だけではなくサスペンスの醸し出し方、巧みなストーリー運びにあると強く感じる。勿論、現代科学捜査では通じない所はあるだろうし、カット・バックの性質上サスペンスから離れた物語に、不満がある読者もいると思う。その上で、読むべきサスペンスの一つにあげたいと思う。2020/01/20
k5
66
巻末が袋とじになっているこの本について知ったのは、宮部みゆきさんのインタビューかなんかで、おそらく高校生の頃だったのですが、年齢が三倍近くなってやっと初読み。でも意外な結論だけを求めたであろう若い頃に読むより、味わい深く読めました。解説でも『暁の死線』書かれていますが、ニューヨークの街で出逢う男女の物語が洒脱で、それだけに解決篇にも感情移入できます。もう一回読んでもいいな。2023/03/04
空猫
48
【海外ミステリマストリード43/100】死体なき(切断し焼却され骨と指が残るのみ)殺人事件の裁判の様子から始まり、次章では奇術師の男が妻になる女性との出会いが語られ、交互に展開していく。裁判の被告人はずっと明かされず進み、奇術師の妻が事故と見せかけて殺され、の犯人の復讐&追跡劇に。この二つがどう繋がるのか先が気になって仕方なかった。…あれは一体誰なんだ?誰だ?誰なんだ?バラバラのピースがカチリとはまった時の爽快感たら、なかった。物語自体もそうだが登場人物が8人というシンプルさがどストライクでもあった。 2021/10/21