内容説明
クロックフォード―どこにでもありそうな平和で平凡な町。だが、ひとりの少女が殺されたとき、この町の知られざる素顔があらわになる。怒りと悲しみ、疑惑と中傷に焦燥する捜査班。だが、局面を一転させる手がかりはすでに目の前に…!警察小説の巨匠がドキュメンタリー・タッチで描き出す『アメリカの悲劇』の構図。MWAグランドマスター賞受賞第一作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
107
〔再読〕流石はヒラリー・ウォーと唸らされる。特徴はドキュメンタリー・タッチの構成であり、インタビュー形式で物語が進行するという斬新な設定である事。この構成自体も、ラストで驚かされる大切な一因となっているのだが、全くこの当たり前の事実にさえ気付かず読了となる。静かな平凡な町で、1人の女子高生が殺害される。よそ者の流れの犯行と思われたが、警察の捜査により町の内の誰かしか犯行が行えない事実が判明する。犯人が捕まらない事で、炙り出される人の悪意には作者の思いが伝わってくる。静かにドキドキさせられる、傑作だと思う。2019/12/01
yumiko
89
どこにでもある静かな町、どこにでもいる穏やかな人々。それらがある日残忍な殺人事件によって一変する…。犯人はよそ者ではない、我々の中にいるとなった時、住民の間で徐々に炙り出されていく偏見や差別に身震いする。破壊されたものは殺された少女の人生だけではない。意味もなく疑われた人々、お互いの信頼、町の秩序…たとえ事件が解決しても以前のように戻ることはないだろう。住民のインタビュー形式で進む物語に主役はいない。もしいるとするならば、それは事件によってメッキが剥がれ落ちてしまった小さなコミュニティだろうか。名作♪2017/03/03
Panzer Leader
61
初読みのヒラリー・ウォー、平凡な田舎町で起きた女子高生殺人事件をインタビュー形式で描いていてまるでリアリティードラマを見ているよう。犯人捜査が進む中、平和で進歩的と思われれていた街が次第に疑心暗鬼にとらわれ内部崩壊していく過程がうすら寒い。帯のたたき通り読み始めたら最後まで一気読みの面白さでした。2017/10/01
星落秋風五丈原
59
ベビーシッターのアルバイトをしていた女子高校生サリーが死体で発見される。最初はわかりやすく発見された不審者が容疑者と思われたが、彼には留置されていたという立派なアリバイがあった。そこで街は俄に緊張感に包まれる。“この町の誰かが”サリーを殺したのかもしれない。様々な立場の人々のインタビュー形式で語られる事件の全貌がまるで本当の事件記事のようだった。語り手の主観100%というインタビューを複数取り入れることで、読者は俯瞰して事件を見ることができる神視点を手に入れる。2020/07/21
yucchi
39
ある平和な町で起きた女子高生殺人事件がインタビュー形式で進む。初っ端の被害者の母親の、同情されるはずなのになんか嫌悪感を感じざるを得ない所が妙にリアル(^_^;) 部外者ではない『この町の誰かが』犯人だとわかってから、他人の粗を探し追い込んでゆく町の人々の心の闇。綺麗事を言っていてもどこかで偏見や差別、人よりも優位に立ちたいというプライドが見え隠れする。この終わり方は好き。ヒラリー・ウォーさすがっす(^O^)2017/05/14