感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
geshi
32
主人公ジョーの背伸びをしている内面描写が実に繊細。手斧と蝋燭への恐怖や父親の死への罪悪感や犯罪をやろうとしても忌避してしまう正義感が、大人になり切れていない青年の感じをよく表している。全く異なるタイプの女性二人それぞれに、安定しているが大成功はしない生活と危険を伴うが大成功するかもしれない生活を仮託させているのも、うまい構図。映画・ラジオ・実況中継・舞台と様々な手法で語られるジョーのトラウマも含めて、唐突にいっちゃうオチはサイコミステリっぽい味わい。2016/01/06
Kotaro Nagai
9
本作は著者の1950年長編8作目。原題は、Here Comes a Candle。邦題からはサイコホラーっぽい印象ですが、実際は幼少時にトラウマをかかえる純粋な青年が今の生活から抜け出そうともがく姿を描いたものです。彼は地方都市の裏社会のボスの使いぱしりをしてますが、同郷の心優しい娘と知り合い、彼女との結婚を夢見て現在の生活から手を切ろうとします。その心の揺れをラジオ、テレビ、映画、舞台などのシナリオを挿入する実験的な手法を使って構成されます。ブラウンの主人公に寄せる細やかな人物描写が印象に残りました。2022/03/02
spica015
6
短篇で知られた作家だけあって、ラストは短篇作品のような唐突とも言えるオチだった。メインのストーリーの間にラジオやステージの体裁を取って主人公の深層心理を描写する部分が挿入され、その手法がなかなか効果的で面白かった。作品としてはミステリに大別されるのだろうが、主人公がSF好きであったり、心理状態の変化をじっくりと見ることができたりする部分が、ジャンルにとらわれない不思議な魅力を生み出している。ラストについては予め記されている通り悲劇的と言えばそうだが、ジョーにとっては案外幸せだったんじゃないかと思う。2015/12/18
蛇の婿
6
うおぉぉぉぉ!ジョーぉぉぉぉぉ!というのが正直なラストの感想です。このラストは予想出来なかったなぁ…作中、ラジオやビデオ、スポーツ放送形式の描写や、主人公の心理などを一回り小さい活字で書くという実験的な手法もおもしろく、そして最後にその方式でガツンとくる。これは、さすがフレドリック・ブラウンというべき作品でしょう。2012/03/25
pika
3
ジャンルとしてはミステリーらしいんだけど青春文学じゃないかー。精神不安、精神病を取り上げた部分が強調されていて、確かにその通りなんだけど、青年の葛藤が生々しく活き活きとしていて主人公に魅力たっぷりだし、読み応えあった。父親の死とトラウマ抱え、貧苦を抜けるべく犯罪の道を進もうとする。野心と美しい女か、穏やかな心と愛する女か、という相反した願望の狭間を行きつ戻りつ悩みに悩む。ジョーの葛藤がメインなので、的な進展はなく、同じことでグルグルと停滞してしまう側面はあるけど、必要な部分であり、そこが魅力になっている。2024/02/11
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- 和書
- 日本笑話集 現代教養文庫