出版社内容情報
ポイズンヴィルは鉱山会社社長の大物が労働争議対策として集めたギャングたちによって、支配され汚濁に満ちた市(まち)になっていた。その浄化を望む男に呼ばれたコンティネンタル探偵社の私が市に着いた途端に、その男は殺されてしまう。その男の父親である鉱山会社社長がそのまま、市の浄化を私に依頼した! 銃弾飛び交う、血で血を洗う抗争を巧みに利用しながら私は市の毒に挑んだ。ハードボイルドの巨匠ハメットの長編デビュー作を名手の翻訳で。
内容説明
コンティネンタル探偵社調査員の私が、ある町の新聞社社長の依頼を受け現地に飛ぶと、当の社長が殺害されてしまった。ポイズンヴィル(毒の市)と呼ばれる町の浄化を望んだ息子の死に怒る、有力者である父親。彼が労働争議対策にギャングを雇ったことで、町に悪がはびこったのだが、今度は彼が私に悪の一掃を依頼する。ハードボイルドの始祖ハメットの長編第一作、新訳決定版!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
森オサム
60
著者初読み。1929年のアメリカが舞台なので、時代が違う、国が違う、と言う事で、物語世界の基本的な常識が理解出来ずいささか戸惑った。タイトル通りに血と暴力に満ちているが、嘘や裏切りも満々に満ちている。碌な奴がいないこの街で、非情に暴れまわる主人公の行動原理は何なのか?。次々と増えて行く死体の山を掻き分けて話を読み進めるが、主人公を含め誰一人と感情移入出来なかった事に気付いた。なるほど、こうして突き放されて傍観するしか無いんだな。正義の無い物語は感傷を許さず、血の収穫物が何だったのかも私には分からなかった。2020/04/11
GAKU
55
田口俊樹さんが翻訳という事で購入したのが三年前。ずっと積んでおり、やっと読みました。初ダシール・ハメット。ハードボイルドの元祖と言うべきこの作品、田口さんの翻訳だから最後まで読めたかな。 2022/09/06
みつ
52
「ハードボイルド」探偵小説を確立したとされる作。であるからには読んでいるはずだがほとんど記憶にないのは、当時謎解きのミステリばかり読んでいたせいか。刊行年の1929年は、クイーンのデビュー作『ローマ帽子の謎』とヴァン・ダインの『僧正殺人事件』の年だから、そちらばかりに目が向いていたかもしれぬ。改めての感想は、①人がやたらに殺される。p233で「十六人」と数え上げるが、その後さらに増える。②探偵役は名を与えられず、かつ探偵社に属するため、私立探偵としての属性は削ぎ落とされる。③彼の行動理念は不明。{続く)2025/12/04
あさうみ
48
息をつく間もなく次から次へと人が死んでいく…噴煙まざる赤と灰色の世界、駆け引きを一歩間違えれば待つのは無残な死。まさにハードボイルドの元祖。荒くれ者がぶいぶい言わせている社会で相手の思考と行動を読み共食いさせる探偵“おれ”の強いことこの上なし!2019/06/05
Shun
40
ハードボイルド文学の先駆者として知られる作家の代表作。まるで古いギャング映画のような血で血を洗う抗争劇が客観性を重視した文体と合い硬派な作品となっている。そして今まで読んた探偵小説の中で特に流血が多く、それはタイトルからも分かる通り。ただ原題には”血”という語はないので邦訳の妙。ストーリーは調査員の主人公が反社会的勢力蔓延る町の大物に依頼され、殺害された彼の息子が始めた町の浄化を引き継ぐという内容。また探偵は悪を成敗する為に悪をも利用するダークヒーロー的な存在で、この分野でも後続作品に影響を与えたようだ。2022/04/09




