内容説明
英国紳士の社交場―クラブ。憩いを求めて三々五々、会員たちは足を運ぶ。名探偵気取りの弁護士、すべての人の望みをかなえようとして、すべての望みをかなえられない幹事殿、苦情に生きがいを見いだす問題児、わが道をゆくシニカルな開業医…彩豊かな配役が右往左往するなか、動きだした物語はどこへ転がってゆくのか?『伯母殺人事件』の技巧派が贈る、趣向三昧の第二長編。
著者等紹介
越前敏弥[エチゼントシヤ]
1961年生まれ。東京大学文学部卒業。英米文学翻訳家。主な訳書、ゴダード「惜別の賦」「鉄の絆」、ハミルトン「氷の闇を越えて」など
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
本木英朗
27
英国の黄金時代本格ミステリ作家のひとりである、リチャード・ハルの長編2作目である。俺は今までに2回読んでいたが、2019年の話は途中で無理になった。3回目でようやく、という感じだろうか。英国紳士の社交場――クラブ。憩いを求めて三々五々、会員たちは足を運ぶ。弁護士、幹事殿、問題児、開業医……彩り豊かな配役が右往左往するなか、動き出した物語は、どこへ転がっていくのか?という話である。果たして真犯人は誰だろうか?ってところは途中で分かったしまう。でもそれからがまたどうなるのかが見ものであります。(→)2022/01/31
maja
16
英国紳士が集まる社交クラブホワイトホール。ある日、バニラ味にこだわりを持つ日頃から何かと口煩い常連の老人がクラブで亡くなった。また、その日は料理長の妻が悪戯心で毒物の治療薬をバニラエッセンスの瓶で夫に持たせた日でもあって・・。動揺する料理長に、クラブの体裁を取り繕うとあわてふためくクラブ幹事フォード、やがてどこからか彼に指示する奇妙な脅迫状が届きはじめて彼は鱈料理でまずは抵抗するが。どこに向かって行くのか。この話は。英国っぽい皮肉の効いたじんわりと可笑しさ漂うミステリで楽しい。 2021/11/21
アカツキ
14
会員制クラブの料理長から間違って料理に劇薬を入れたかもしれないと報告され、それを注文した会員が死んでいるのが見つかる。クラブの体面を慮る幹事は会員の主治医の協力を得て心機能障害で亡くなったということにして落着を図るが、脅迫状が届くようになり…。ヘタレのくせに脅迫者の要求には意地を張る幹事、自分が書いた脅迫状にそそのかされる脅迫者、探偵役は本泥棒探しに夢中。このメンツで大丈夫かと不安になるユーモアミステリ。もうちょっとテンポがよかったらと楽しめたかも。2020/09/10
歩月るな
12
「子羊を盗んで吊されるより、親羊を盗んで吊されるがまし。そういうことですね」実は今世紀訳出という超傑作。訳が古くない上に訳注解説共に充実していながら、300頁に満たずに決着する読みやすさ。それなのに登場人物と来たら、実に生き生きと描かれており「心理面の小説」の一端を窺い知れる。『叔母殺人事件』の知名度が大きく、しかしこの一冊で「技巧派」としての凄まじさを理解する事に。解説はバークリー派の森英俊。この人にしか書けないであろう解説であり、続く『善意の殺人』でも訳・解説を務める。この一筋縄でいかない感じは凄い。2016/06/13
きりん
10
大好きだ、これ。かなりブラックな犯人の内面も、軽いタッチの文体との兼ね合いがいい。叔母殺人事件と合い通づる。 英国のクラブの雰囲気もまた楽しい。(作者としては揶揄してるのかもしれないけど、わたしはこの時代の英国の雰囲気が大好きだ。揶揄されるの側というより揶揄してる方もくだらない贅沢な悩み感がまた好きだ。) 技巧的な全体も、近年の技巧ばかりが鼻につく感じに終始しないのは、この全体の洒落たユーモアのある雰囲気が読ませるものだからだと思う。いやーよかった。2023/03/26
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