内容説明
英国の片田舎に住む開業医ビクリー博士は、妻を殺そうと決意し、完璧な殺人計画を練り上げた。犯行過程の克明な描写、捜査官との応酬をへて、物語は息詰まる法廷の攻防へ。謎解き小説の雄アントニイ・バークリーが、一転、犯人の側からすべてを語る倒叙推理小説の形式を活かして完成させた本書は、殺人者の心理を見事に描いて新生面を拓いた。驚くべきスリルに富む歴史的名作!
著者等紹介
アイルズ,フランシス[アイルズ,フランシス] [Iles,Francis]
1893年イギリスのハートフォードシャー生まれ。ユーモア作家として“パンチ”誌で活躍したアントニイ・バークリー=フランシス・アイルズは、「?」名義で『レイトン・コートの謎』を著して以降、『毒入りチョコレート事件』『第二の銃声』『ジャンピング・ジェニイ』など、従来の探偵小説に対する批判を織り交ぜた実験精神あふれる作品を発表。英国本格黄金期を代表する作家としてその地位を不動のものとした。1971年没
大久保康雄[オオクボヤスオ]
1905年生れ。慶応大学卒。87年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
227
1931年に書かれた 倒叙推理小説の名作。 37歳のビクリー博士が 企てた妻ジュリアの殺人。 ビクリー博士のキャラが よく、古典的な設定が 懐かしい。 叙述も軽快で、思わず引き込まれていく。 ビクリー視点のアイヴィ、 マドレイン、そして妻ジュリア…最後はそういう 終わり方をするのかという 印象の展開だった。2015/11/29
Kircheis
204
★★★☆☆ 世界三大倒叙ミステリの一つだが、ミステリ要素は意外と少なく、むしろ犯罪心理にスポットを当てたユーモア小説だと感じた。 全編を通じて、ビグリー博士の自己中心的な内面が露わにされていて、全く彼を擁護する余地はないのだが、登場人物のいずれも性格に難があるので、結局犯罪者と被害者のいずれにも肩入れすることなくフラットに物語を読み進めることができた。 この作品は何といっても皮肉な結末の衝撃が大きいと思うが、なぜそのような判決に至ったのかをもう少し詳しく書いてほしかったところではある。2020/12/03
ケイ
139
倒叙推理小説の三大名作の一つと帯にあったので、期待値が高くなりすぎていたかもしれない。まったく自分勝手としかいいようのない主人公の犯す殺人の動機や、それをしてしまう彼の厚かましさにはあきれたが、犯罪を最初からみているだけに、警察との応酬では、彼のしたことがバレないかドキドキした。村人の鈍感さにもニヤリとしたり。しかし、最後が…。こういうオチもミステリにはある気もするし、もうちょっと違う捻りはなかったのかしら。2016/09/23
まふ
109
好色家で上流社会上がりの妻に牛耳られている冴えない医者ビクリーは妻を殺す計画を立て、その間愛人を適当にあしらいつつ別の女性に手を出し…、とチャラチャラした人生を送る。邪魔者の妻をモルヒネ中毒に仕立ててついに殺し、次に…と計画を立てて実行するが、警部の訪問を受けて逮捕され、公判に至るもうまく乗り越えて, とはうまくいかなかった。計画通りの殺人が齟齬をきたして一挙に暗転、という最後が面白い。裁判をうまく乗り切ったのに、というビクリー医者の嘆きの声が聞こえて来そうだった。G584/1000。2024/08/09
NAO
92
『毒入りチョコレート事件』の作者アントニイ・バークリーがフランシス・アイルズのペンネームで書いた作品。殺人犯を主人公とし、その殺人の動機や殺人計画のあらまし、犯行に至るまでを詳細に描いたこの作品は、殺人犯を探し当てるという推理小説ではなく、犯人の心理を克明に描いた人間ドラマだ。一人はコンプレックスのため、もう一人はプライドの高さのために相入れることのなかった不幸な夫婦。だが、エドマンドがもう少し誠実だったらジュリアの態度も変わっていたのではないかという気がしないでもなかった。2017/07/24