内容説明
屋上の絞首台に吊された藁製の縛り首の女―小説家ストラットン主催の“殺人者と犠牲者”パーティの悪趣味な余興だ。ロジャー・シェリンガムは、有名な殺人者に仮装した招待客のなかの嫌われもの、主催者の義妹イーナに注目する。そして宴が終わる頃、絞首台には人形の代わりに、本物の死体が吊されていた。探偵小説黄金期の雄・バークリーが才を遺憾なく発揮した出色の傑作。
著者等紹介
狩野一郎[カリノイチロウ]
1961年生まれ。東京都立大学人文学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
314
★★★☆☆ ロジャー・シェリンガムシリーズの中でも有名な作品だが、個人的には可もなく不可もなくだった。 ロジャーは大抵真実と離れた方向に推理しちゃいがちな「迷」探偵なのだが、本作ではそれが顕著である。 犯人は序盤で読者に示唆されるが、明後日の方向に推理を進めるロジャー。あまつさえ偽証や証拠捏造にまで手を染める! 私も真相はそんなに単純ではないだろうと考え、自分なりに推理していたが、細かい点は除いて概ね正解筋を辿れた気がする。 たまに笑えるシーンがあるのは好き。2022/06/09
W-G
71
中学生くらいの頃、バークリーといえば毒いりチョコレート事件くらいしか入手出来なかったのですが、今ではこんなに翻訳も増えて見直されているのだなぁと感慨深い。今作で本格ミステリベスト10の1位にランキングされているのだと最近になって知り、何冊か纏めて購入。2002年頃は本格からは離れていた時期なのでスルーしていました。内容は本格というよりはアンチミステリ的。読者が拾うべき手掛かりなんかは一切無し。しかし、星新一のショートショートに通ずるような皮肉の効いた結末は大好きです。上質な悲喜劇。面白かった。2016/05/24
koma-inu
57
シェリンガムシリーズの集大成と呼べる作品。今までも幾度もか迷探偵ぶりを披露していたが、今回は凄い。首吊り自殺に見えた事件現場を、シェリンガムがある細工をする事で、別の人が疑われる事に。困ったシェリンガムが暴走偽推理を働かせ、事件を闇に葬ろうとする・・という、もう、シェリンガムの事を知らないと、楽しみ方が分からないミステリーになってます😅一ラスト1行のどんでん返しがあり、そこは非常に秀逸。とはいえ、一見さんお断りの作品で、別のシェリンガムシリーズを先に読む事をオススメします。2023/08/19
藤月はな(灯れ松明の火)
55
シェリンガム・シリーズで最高傑作と言われる作品。病的な虚言や自殺を仄めかす発言を繰り返し、ヒロイン気取りで顰蹙を買っていた女が死んだ。自殺としか思えない死体状況だがそこには椅子が置いていたために殺人の疑いが。まずは死んだ女に皆共々、ウンザリしていたシェリンガムが自殺を装わせて椅子を置いていたり、裁判で皆に自殺を証明するように打ち合わせたりしている場面に探偵の良心に唖然とさせられる人も居られるだろう。でも私は死ぬ勇気もないのに「死んでやる」と連発する輩は縊り殺したくなる程、嫌いなので皆を幸せにした結末に拍手2013/08/11
ぽんすけ
47
めっちゃ面白かった~。もしかしたらシェリンガムシリーズの中で一番好きかもしれない。ロジャーの迷探偵ぶりがいつもと逆にいってるのもよかった。今までの犯人を突き止めるための行動が、殺人を自殺に見せるための行動に変わるとこんなに面白くなるのか。今回は自分の軽率な行為で容疑者にもなっちゃうしシリーズの中で一番切羽詰まった彼を見れたと思う。登場人物がみんなで自殺説を補強するために証言を作っていく所、却って怪しくないか?とはちょっと思ったがwそして最後に明かされる真犯人。これはどんな名探偵でもわからなかったと思う。2025/03/27