内容説明
ロジャー・シェリンガムが創設した「犯罪研究会」の面面は、迷宮入り寸前の難事件に挑むことになった。被害者は、毒がしこまれた、新製品という触れ込みのチョコレートを試食した夫妻。夫は一命を取り留めたが、夫人は死亡する。だが、チョコレートは夫妻ではなく他人へ送られたものだった。事件の真相や如何に?会員たちは独自に調査を重ね、各自の推理を披露していく―。
著者等紹介
高橋泰邦[タカハシヤスクニ]
1925年東京生まれ。早稲田大学理工学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
724
本書はミステリーの古典と位置付けられているらしい。起こった事件はただ一度だけ。したがって事実も一つ。芥川の「藪の中」を思わせるような構成だ。「藪の中」では事件の被疑者たちがそれぞれに自分たちの目撃譚を語ってゆく。一方、こちらは6人の素人探偵たちが事の真相に迫ろうと試みる。私も小説の早い段階で事件の推理を試みた。そして、6人のうちの誰が真相を解き明かすのかも。前者では後半に推論を述べたある人物とほぼ同じであった。ハズレ。また、後者については小説の構成原理からしてこれしかあり得ないだろう。これは当たった。2016/10/07
Kircheis
444
★★★★☆ 言わずと知れた「多重解決」物の元祖。 ある未解決の事件を題材に、シェリンガムが主催する犯罪研究会の会員6名が推理合戦をする。 各人が順にもっともらしい推理をするが、いずれも綻びがあり、最終的にチタウィックの衝撃的な解答で幕切れとなる。しかし、面白いのは最後の解答が正解とは限らない点である。 ミステリ好きであれば必読の名作だが、展開される推理の全てが素晴らしいとは言い難いのと、前の推理を否定する根拠が後出しの新情報というパターンが多いのがやや残念。2022/06/04
徒花
352
「アンチミステリ」の古典的作品。ある女性が毒入りのチョコレートを食べて死んだ事件について、ミステリ愛好家の6人がそれぞれ調査し、1日ずつ犯人を当てる推理ショーを繰り広げていく。ちょっとセリフが冗長でまどろっこしく感じる部分が多いが、ミステリーにおいて探偵役のキャラクターがよくやる言動を皮肉りながら、ミステリー小説を小ばかにしていくスタイル。終わり方はちょっともやっとして読後のすっきり感はあまりないが、ミステリファンなら一度は読んでおきたいもの。2017/09/22
夜間飛行
294
警察が諦めた毒殺事件を巡り、犯罪研究会の会員が一人ずつ推理を披露していく。その事件とは…富豪夫妻が毒入りチョコを食べ妻は死に夫は助かった(ただしそのチョコは別の人への贈物を譲り受けた物)。この偶然の連なりに殺意はどう関わるか。前の推理を切り崩し次の推理を語るリレー方式が面白い。通常のミステリでは探偵の目的は犯人捜しのみだが、ここでは推理ゲーム(真剣勝負)という座標軸が加わる事で目的は微妙にずれ、事件はメタ性を帯び、探偵の語り口も変わる。そして何よりもこの推理は多声だ。結末に読者をも参加させる意図を感じた。2022/03/20
遥かなる想い
234
ぱっとしない題名とは裏腹にこの構成は大胆なものである。すなわち、「同一事件に対して、6人が推理を挑み、六様の解決策が示される」 しかも各々が読んでいると、妙に説得力があって、楽しめる。ただ、どうせ最後の推理が解なのだからと思ってしまって、途中の5案までは どうしてもまじめに読まないという難点があったのは事実。作者の大いなる実験だったのか?2010/05/15