感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
cinos
16
アイリッシュ、すごい。短編集5はどれも傑作。「わたしが死んだ夜」と「死ぬには惜しい日」の皮肉なオチ、「コカイン」の推理力、「妻が消えた日」の意外なトリック、そしてベストは「日暮れに処刑の太鼓が鳴る」の「走れメロス」的叙情溢れるミステリ。アイリッシュ、最高です。2017/11/29
汁物はかき込まず、かき込むものは知らない。
5
一番好きな作家、再読。/やはり素晴らしい。顔の表情を表現しても顔の美醜に言及せず。素朴な愚行、迷える犯人さえをも悪しく貶めない。/そのように自己規制した表現スタイルでありながら、既に1930年代にこれだけ多彩な作品を生み出しているなんて。/もしかして彼の作品のストーリーをなぞりつつ、美女を登場させロマンスを付加し、人間の狂気を描いてボリュームを増したら、現代の一級作品になりえるのでは。。2017/12/03
Tetchy
5
今回収められた9編を読むとアイリッシュの作風は単なるサスペンス・スリラー作家という安直なフレーズでは収まらずに、サスペンス・スリラーの手法を用いた都会小説という思いを強くした。「リンゴひとつ」と「日暮れに処刑の太鼓が鳴る」の2編が秀逸。印象的なのは「葬式」と「死ぬには惜しい日」の2編。特に「死ぬには惜しい日」は豊﨑氏が長さといい、意外性といい、皮肉な結末といい、教科書に載せるよう推薦していた作品だ。でもこれ、けっこうインパクト強いんですけど・・・。2009/09/21
こみっく
3
「日暮れに処刑の太鼓が鳴る」は『走れメロス』を思い出したが、オルークを駆り立てたのは友情ではなく刑事という本分ゆえというのがよかった。「死ぬには惜しい日」では女心の描写にも違和感を感じさせない。そういえばこれも太宰と雰囲気が似ているかもしれない(ふと『満願』の女性がよぎった)。Wikiを見て彼がLGBTだったと知り、どのお話にも漂うもの哀しさ(=自分を惹きつけるもの)がどこから来るのかわかったような気がした。 2020/05/17
にゃろ
3
「死ぬには惜しい日」を読むために借りた。死のうとして邪魔が入り、今日は諦めて外出したら、死ぬには惜しいくらいにすばらしいことが起こり、けれど・・・というお話。他の短編も先が読めず、とても楽しめた。2010/11/05